世界に秀でた国民皆保険支える開業医の再評価を
理事長 垣田さち子
明けましておめでとうございます。
今年は、戦後70年目という節目となる年です。
武士階級が支配する封建制時代を終らせ、明治維新による近代化が始まったのが147年前。それから26年目に日清戦争、その10年後に日露戦争、さらに26年後には満洲事変を引き起こし日中戦争へ。そして、太平洋戦争へ突入。国家予算の半分以上が軍事費という異常な国のあり方を経て「無条件降伏」という結末で、ようやく国民主権と平和を手に入れることができたのです。
惨憺たる戦争の体験を深く反省し二度と戦争をしないことを誓って、戦争放棄を高らかに宣言した平和憲法を制定したのでした。
あれから70年、国民生活の幸せ度の課題はさまざまに論じられますが、戦争をしない、他国の人を武器で殺さない約束は守ってきました。平和憲法を堅持してきたのです。
国民主権の前提となる代議員制度において、一票の格差が違憲状態であるという最高裁判決が出たにもかかわらず、是正されないまま選挙が行われるなど、国民の意志が正しく反映されない今の国会は大問題ですが、70年前までは女性に選挙権さえありませんでした。政治参加を保障する投票の大切さを私たち自身がもっと自覚する必要があります。
国民の命と健康を守る仕事に就いている私たち医師にとって、この70年は誇るべき年月でした。
戦後しばらくは、先進国中最低であった日本人の平均寿命・男性50歳、女性54歳が、一昨年に男性は80歳に達し、女性は87歳で世界一の長寿の国となったことです。
この快挙に世界が注目し、要因として、海のもの、山のものを組み合わせ工夫された和食の献立、生活の隅々まで常に清潔を心がける日常の暮らし方、高齢者を温かく受け入れる社会のあり方、平等を保障する教育の機会均等など、さまざまな角度から議論がなされています。
特に、日本の医療制度は、少ない費用で効率的に医療を提供している優秀なシステムとして、世界から羨望の眼差しが注がれています。にもかかわらず、歴史に逆行する形で進められてきた社会保障制度改革が、いよいよ実施に移されようとしています。
私たちが70年かけて作り上げてきた国民皆保険制度と、これを支えてきた日本の開業医の成果を、改めて国民全体で再確認する時です。
本年も、理事・事務局一同、力を合わせてがんばりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
会員の皆さまにも、幸多き一年でありますように祈念致します。