アートの島「直島」へ…つれ合いと孫娘との3人旅  PDF

アートの島「直島」へ…つれ合いと孫娘との3人旅

北小路博央(北)

 瀬戸内海にある直島群島の直島をご存知の方もおいでかもしれない。

 岡山県宇野港からフェリーで約20分だが香川県香川郡に属する直島は、かつて三菱製錬所があったり、大量産業廃棄物の集積地であったりして、“公害の島”という悪名が高かった。2006年にベネッセコーポレーションの参画があり、建築の安藤忠雄氏とアーティストグループの積極的な協力もあって島全体が絵画・造形など近代アートのメッカに生まれ変わった。(以上は孫娘―キャラクターデザイナー20+α歳からの受け売り)

 2010年の瀬戸内国際芸術祭なるイベントで有名になり、今や「世界で行ってみたい島」の第7位にランクされている、というのはいささか眉つばもの?と思っていたが、2010年12月と2011年6月に孫娘に引っ張られて重い腰を上げ出かけた私達がすっかりその魅力にとりつかれてしまった。

 京都から岡山へは新幹線、岡山からはマリンライナーを茶屋町で乗りかえて宇野まで超過疎ローカル線、宇野港はかつて宇高連絡線でにぎわったが、「今はさびれてオンボロロ」とまではいわないが、内海フェリーの発着ターミナルがあるだけ。その埠頭の先端に、“宇野のチヌ”と題する巨大な魚の造形がある。淀川の漂流物を集めて作ったというプラスチックのゴミの塊のような奇怪な造形にしばし唖然。

「宇野のチヌ」
「宇野のチヌ」

直島の「赤いかぼちゃ」
直島の「赤いかぼちゃ」

 20分の船旅で着いた直島宮浦港では、「赤いかぼちゃ」がお出迎え。この巨大なかぼちゃ(内部にも入れる)は奇怪ではなくてまことにかわゆい。宮浦港のフェリーターミナルもこじんまりしていて好感が持てる。ベネッセ専用バスで山道をクネクネ走ってベネッセハウスへ。島内にベネッセ系ホテルが4カ所あるが、ここはベネッセミュージアムも併設されていて、きわめてシンプルな建築。早速、ベネッセ島内循環バスを利用して地中美術館、季禹煥美術館を見て巡る。バスストップからミュージアム入口へのアプローチはアップダウンがきつくてコーキ(高貴?)高齢者には目で見る前に足で感じる美術館巡りになってしまう。それでも、夫々の建物と展示作品には目を奪われ、心を打たれるものがあった。ホテルに戻ってテラスでウエルカムシャンパンを飲みながら眺めた瀬戸内の落日の美しさは、15分間の至福の時間となった。

瀬戸内海の落日
瀬戸内海の落日

 翌日は島の古い家屋の空間を作品化したという「家プロジェクト」を見て廻る。2回に分けて6カ所のそれぞれきわめてユニークな作品を鑑賞した。特に印象に残ったのは『はいしゃ』、その昔、歯科医院であったという廃屋?を改装、中2階に上ると大きな自由の女神のレプリカがぬっと目の前に現れたのにびっくり、右手のたいまつにはぐるぐると赤い灯が回っているのにまたびっくり(大竹伸朗作)。

 もう一つは護王神社、小高い丘の上まで昇る古風な石の階段が一苦労、神殿の前にガラスブロックの階段が地中の石室につながっている。山の中腹に石室までつながるコンクリートの通路(洞窟?)があり、懐中電灯をたよりに人一人がようやく通り抜けられる真っ暗闇の先に地中の小池があり、先程のガラスの階段がここまでつながっている。閉所恐怖症を誘発されそうな空間であった(杉本博司作)。

 まことにユニークな作品ばかりでコーキ(高貴?)高齢者はオロオロするばかりだが、後味はこの上なくすっきりしていて、帰りの車中、つれあいが「もう一度行きたい」とのたもうた。孫娘がかたわらでニヤニヤ…。

「家プロジェクト」の『はいしゃ』(この中に自由の女神が…)
「家プロジェクト」の『はいしゃ』(この中に自由の女神が…)

ページの先頭へ