TPPは国民的な議論を経よ 府議会が国に意見書
京都府議会でTPPに関して国へ二つの意見書が3月26日にあがった。一つは「TPP交渉参加に関する意見書」で、地方における議論や声を真摯に受け止め、国益を守るために明確な方針と十分な情報を開示し、国民的な議論を経て対応するよう要望したもの。もう一つは京都府医師会の請願を受けた「国民皆保険制度の堅持に関する意見書」で、皆保険の崩壊につながりかねない医療の営利産業化などを行わないよう要望したもの。
協会も参加するTPP参加反対京都ネットワークは、TPP参加断念を求める陳情を議会に提出して働きかけてきたが、そうした声が議会を動かした結果と受け止めている。意見書は、私たちが陳情で求めた「断念」までは踏み込まなかったが、広範な京都府民の声を国に届けるものとなっている。まだまだ参加断念に向けた取り組みは続くが、まずは今回の取組で意見書をあげられたことに関し、賛同いただいた会員各位に心よりお礼を申し上げる。
また、ネットは安倍首相の参加表明を受けて3月18日、抗議声明を発表。安倍首相をはじめ、京都選出国会議員、マスコミに対し送付した。
安倍首相のTPP交渉参加表明に抗議する
3月15日、安倍晋三首相はTPP交渉参加を表明した。私たち、京都の医療・農業・食の安全・労働等、広範な団体で構成するTPP参加反対京都ネットワークは、これに厳しく抗議する。
安倍首相は参加表明で、TPP交渉は既に開始から2年が経過しており、既に合意されたルールをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実と認めた上で、だからこそ1日も早く交渉に参加しなければならないとした。そして、「最も大切な国益」として、日本の農業と国民皆保険制度をあげて「これらの国柄を断固として守る」と述べた。
しかし、米国の貿易担当官がシンガポールでのTPP交渉会合で、「日本はカナダやメキシコ同様、事前に交渉テキストを見ることもできなければ、すでに確定した項目について、いかなる修正や文言の変更や、新たな提案もできない」と述べたというレポートがNGO関係者から寄せられている。もはや日本に交渉の余地など残されていないことは、既に広く報道されてきたところである。
ひっくり返すことが難しいことを承知で、最も大切な国益を危機に晒してまでなぜ、TPP交渉参加に踏み切らねばならないのか。リスクの大きさに比してもさらに大きなメリットが本当に存在するのか。
TPP参加による経済効果として「実質国内総生産(GDP)を0.66%押し上げ」の試算が公表された。これをもってメリットだというなら、それは間違いである。TPP参加は、農業等、関税撤廃に伴い打撃を受ける産業に従事する人たち一人ひとりの生活・生存を危機に追いやるものである。さらには、今回の試算で何ら触れられなかった非関税障壁における規制緩和がもたらす、食の安全や医療の保障など、全国民の生命と健康を脅かす。経済効果が得られれば、「農林水産物の生産額3兆円程度減少」がもたらす国民生活への被害は顧みなくて良いということにはならない。
安倍首相の記者会見は、情報を開示せず、国民的議論を封じたまま、美文で飾り付けられている。「『未来の繁栄』を約束する枠組み」という言葉には何の裏付けもない。「今がラストチャンス」と国民に危機感だけを煽り、一路交渉参加へひた走っているというだけで、何らの誠実さも感じることはできない。すべてがごまかしである。
参加表明は私たちのTPP参加阻止への決意をより強固なものにした。
私たちは、安倍首相の参加表明の即時撤回を求める。そして、日本政府が交渉のテーブルにつかないよう、強く求め、一層の取り組みを展開する。
2013年3月18日
TPP参加反対京都ネットワーク
共同代表 関 浩 (京都府保険医協会理事長)
安田 豊 (京都府農民組合連合会会長)
吉岡 徹 (京都地方労働組合総評議会議長)