医師が選んだ医事紛争事例53  PDF

関節注射は感染対策念頭に!

(60歳代前半男性)
〈事故の概要と経過〉
両手背・両手関節の腫脹・疼痛を訴えて来院。診断はリウマチ様関節炎で、リハビリで経過観察をしていたが改善しないので、約2週間後に左手関節にデカドロン3・3㎎、リドカイン1%5mlの関節内注射を施行した。針は23Gを使用。刺入角度はほぼ直角で、患者は特に痛みを訴えることもなく1回で刺入した。なお、消毒はヒビテンアルコールを使用した。その日の晩から疼痛が強化されたため、2日間にわたり抗生物質(エクサシン400㎎)の注射と内服を投与した後に、A医療機関へ紹介入院となった。
患者側はA医療機関における医療費等の請求をしてきた。
医療機関側としては、手関節に注射をしたのは初めてであったが、手技に問題は認められない。ただし、注射時の消毒を通常よりも雑にした可能性が高く、消毒が不十分であったことを認め、その結果、感染したとして過誤があったと判断した。
紛争発生から解決まで約2カ月間要した。
〈問題点〉
注射の針の太さ、薬剤と刺入部位の適応等、手技に問題は認められないが、医療機関側は、消毒の不十分を認めた。A医療機関の情報提供書より、注射と感染との因果関係は認められた。従って消毒の不十分さを認めざるを得なかった。
〈結果〉
医療機関側が全面的に過誤を認めて、賠償金を支払うことにより示談した。

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