社会保障費抑制案 高齢者に重い負担増計画 かかりつけ医以外の定額負担は先送り  PDF

患者負担増などを求める「経済・財政再生計画 改革工程表」のうち、2016年末までに検討が求められていた事項について、7月の参院選以降に議論を重ねてきた社会保障審議会の医療保険部会と介護保険部会が相次いで見直し案(表参照)を取りまとめた。

政府は社会保障関係費の自然増6400億円を5000億円にまで抑える方針であり、すでにオプジーボの50%価格引き下げも2月実施が決まっている。高齢者の負担増には与党内からも根強い反対があり、70歳以上の高額療養費「一般」区分の外来特例引き上げ幅を厚労省案よりも引き下げることとした。また、後期高齢者の保険料軽減特例についても、均等割を当面継続させるなど激変緩和することで調整。年末に閣議決定される17年度予算案に反映され、法改正の必要なものは通常国会にはかられることになる。
12月8日に医療保険部会が取りまとめた「議論の整理(案)」によると、「かかりつけ医の普及の観点からの外来時の定額負担」や「スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率」などが「引き続き検討」とされ、今回の具体化は見送られたが、70歳以上の高額療養費の限度額引き上げや入院時の居住費負担引き上げなど高齢者に係る患者負担の引き上げ案が提示された。
「外来時の定額負担」については、「かかりつけ医の定義が明確でない」「これ以上の負担を求めることはできない」など部会で反対意見が相次いだことを受けて先送りとされた。しかし、病院への外来受診時の現行の定額負担対象拡大も含めて今後検討される。
また、介護保険部会が9日に取りまとめた意見書では、「負担能力に応じた負担」を求めると明記し、現役並み所得者の負担割合を3割にすることを盛り込んだ。一方で、「要介護1、2」を対象にした生活援助サービスや福祉用具の貸与を介護保険から外し市町村の独自事業に移すことは見送られた。
負担増以外では、子ども医療費助成を独自に行う自治体に国保の補助金を減額するペナルティについて、未就学児までを対象に18年度から廃止する。一部負担金や所得制限があることを条件にする案も併記されていたが、自治体の批判などを受けて無条件とすることとなった。

「STOP負担増」広がる

京都協会は全国の協会とともに4月から「さらなる患者負担増計画の中止を求める署名」に取り組んできた。こうした全国的な反対や懸念の声を受けて一部の負担増計画の具体化が先送りされたが、引き続き声をあげていく必要があろう。京都で集約した署名は9月末に福山哲郎参院議員を通じて2249筆を国会に提出、さらに11月末には泉健太衆院議員を通じて追加分335筆を提出した。署名は引き続き集約中だ。

社会保障審議会各部会の主な見直し案
医療保険部会
①70歳以上の高額療養費の見直し
2018年8月以降、現役並み所得者と一般所得者の限度額を69歳以下にそろえる。外来上限特例については「現役並み」は廃止、「一般」は限度額引上げ
②入院時の居住費(光熱水費相当額)に係る患者負担の見直し
65歳以上での医療療養病床は17年10月から医療区分Ⅰは320円⇒370円。Ⅱ、Ⅲは新たに200円、18年4月以降は370円に。難病患者は除く
③金融資産等保有状況を考慮に入れた負担の在り方
引き続き検討
④かかりつけ医普及の観点からの外来時の定額負担
引き続き検討
⑤スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率
引き続き検討
⑥後期高齢者の保険料軽減特例の見直し
所得割の軽減特例を廃止し、均等割および元被扶養者への軽減特例を段階的に廃止
⑦子ども医療費助成に係る国保の減額調整措置の在り方
未就学児までを対象に18年度から見直す

介護保険部会
①介護保険の利用者負担の在り方
現役並み所得者は18年8月から3割化
②高額介護サービス費の見直し
一般所得世帯の上限額を17年8月から引き上げ
③軽度者に対する生活援助サービス等の給付の在り方と負担の在り方
総合事業への移行は検証を行った上で検討
④介護納付金の総報酬割導入
17~20年度で段階導入
※医療保険の⑥⑦は「改革工程表」以外の事項

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