社会保障としての国民医療を守るために
保険医協会へは推薦で理事の末席に加わらせていただき1年以上が経過しました。いまだにこの組織についてよくわからないことがありますが、わかってきたこともあります。私のように保険医協会のことをよく分からずに入会してそのまま会員を続けているという方は少ないか多いかわかりませんが、理事になってまだ日の浅い私が思っていることを述べたいと思います。
今では、医師会や保険医協会に入会せずに開業される方もおられます。入会金が高いというのが大きな理由なのでしょうが、地域で医療をするには周囲の医療機関と情報交換、市民とふれあう健康まつりへの参加、多職種との連携、予防医学としての健診業務、労働者の健康を守るために産業保健の仕事をしたりするのは重要なことではないでしょうか。そして大きく変化する医療政策についていくには情報を手に入れる手段として医師会、保険医協会への入会のメリットは大きいと思います。特に、保険医協会は開業時の種々の届出や近畿厚生局による個別指導などに対し、手厚く支援することで定評があります。
とはいっても、私自身、医師になってから、そして開業してしばらくは医療については興味があり学会に出席して自分のスキルアップを目指したりしましたが、医療情勢、地域医療などには無頓着で「自分の苦手な分野」というふうに思っていました。
保険医協会は二大目的として「保険医の医療、経営を守ること」および「社会保障としての国民医療を守ること」を掲げ、運動しています。保険医協会の活動に違和感を持っておられる方の多くは、この組織が「戦争反対」「憲法九条を守る会」「反原発」のような医療と直接関係のないことに対し、主張するからではないでしょうか。
わが国の人口減少・高齢化は加速しており、高齢化が進めば医療費の増加は避けられないわけでして、現状それぞれの医療機関で医療スタッフの確保に苦労されていると思われますが、今後益々スタッフの確保が困難になることは必至でしょう。そうした中で「国民皆保険の堅持」という旗は掲げたまま、給付範囲や給付率の縮減、高額療養費制度の廃止、地域医療の崩壊が進み、国民皆保険の実質が具わらなくなってくると危惧されます。さらにはトランプ氏がアメリカ大統領になり、TPPの問題など日本の医療にも少なからず影響があるかもしれません。
保険医協会の活動は一部の思想に偏っているという批判がありますが、「社会保障としての国民医療を守ること」という共通した目標のために、医療者として情勢を見極めるために保険医協会の運動に注目してみてはいかがでしょうか。