医界寸評  PDF

プロ野球セントラル・リーグで、広島東洋カープが25年ぶりの優勝を遂げた。赤ヘル軍団が登場した頃からの地味なファンとして、TVのスポーツニュースや翌朝の新聞記事を見ながら、熱くなる胸と滴り落ちる鼻水は、久しく忘れていた感覚であった▼地方の、資金面で脆弱な球団においては、球歴が華々しくなくとも素質のある原石を見つけ、入団させた後には猛練習で鍛え、磨き上げる以外に栄光を掴む手段はなかったそうだ。そうして育てた中心選手が、潤沢な資金を武器とするGやTといった人気球団に、フリーエージェントとして移っていくのは、ある意味必然とはいえ、ファンとして悔しく悲しい▼自らが身を置く医療界でも、似たような思いが生み出されようとしている。新専門医制度である。メジャーである大学に頼らず、地域に根ざして独自に研修医を育て、専門医を生み出してきた病院はあちこちにある。しかし、新制度が施行されれば、いずれかの大学の関連病院とならない限り、自前の専門医を育成することはおろか、初期研修終了後の、大きな戦力である若手医師をスタッフとして確保することが困難となる。これまでの経緯から、関連病院となる希望を拒絶されるケースも耳にする。予定通りのスタートが困難となった新制度を、実のあるものとするための再考察を望みたい。(呑鉄童)

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