今日も丹後半島はこよなく美しいが、見る人によってその風景は異なる。一私立病院の経営者からみた風景を述べる。
丹後は丹波の一部として語られてきたが、かなり昔に丹後と丹波は区別されるようになった。北丹の病院医療ということになると丹後半島一体で相互に助け合っているところが多い。
医師の数は全国で30万人。総数はこれでいいとする議論はある。人口10万人あたりの医師数の多いのは京都府、東京都、徳島県なのだそうだ。丹後地域は京都に含まれるが、事情はかなり異なる。844・52?のところに、9万7475人が居住している。京都市は面積827・83?、人口147万4570人。風光明媚な、歴史のある丹後であるが、京都市の全面積より広いところに人口はその15分の1である。
京丹後市(人口5万5096人)、宮津市(人口1万8427人)、与謝野町(人口2万1842人)、伊根町(人口2110人)で丹後は医療過疎・医師不足がいわれて久しいが、各方面のご努力である種の改善はなされてきている。京都府立医科大学北部医療センター(一般276床、他19床)の存在、府立医科大学との密接な連携がなされている、市立弥栄病院(一般病床152床、療養病床48床、透析25床)、市立久美浜病院(一般病床110床、療養病床60床)、京都大学と昭和戦前からの強い連携のできている財団法人丹後中央病院(一般病床210床、回復期リハ病床96床、透析21床)、武田病院グループに所属する宮津武田病院(一般病床60床、透析20床)、30年前に地域の人達の熱い期待を担って四苦八苦して立ちあげてきた新参の特定医療法人丹後ふるさと病院(一般病床100床、療養病床60床)がある。他に有床の宇川診療所や、隣県ながらドクターヘリでサポートもしてくれる豊岡病院(518床)もあるが、人口10万人対比で1221床(透析病床数、豊岡病院の病床数を除く)で、全国の平均1234床より少ない。人工透析などでは随分アクセスがよくなった。老健や特別養護老人ホーム、グループホームなども整備されてきている。東京圏以外、地方はますます人口減少が進む中でこれからどのような病院医療を展開していくかが、大きな課題である。全員が賛同できる名案はない。
人間の多様性ということがあっていろいろな医師がいることを期待したいが、自由開業制という制度のもとでは都会生活に馴化してしまった若い医師に過疎地にきていただくのは大変にむつかしい。地域枠で養成されている医学生も卒業後は地域の公立病院に配置されていて、私立病院にはいかなくていいことになっている。自治医大卒業生も公立病院にしかいかない。また個々の医師の生活実態は余裕のあるものではなく、外来診療・校医や介護保険の審査業務、地域の会議、医師会の会合、往診、入院患者の治療、手術など、また学術講演会への参加、自己研鑽とそれぞれにきりきり一杯のスケジュールに追われている毎日である。学会にも京都・大阪・東京としばしば出張しなければならない。
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