2016診療報酬改定こうみる(7) 最終回
新設加算評価しつつもハードル高し
精神科 京都精神科医会会長 中嶋章作
前回改定に引き続き、児童思春期への対応については厚くし、児童思春期精神科専門管理加算として新設した。この加算を評価しつつも算定できる医療機関の施設基準のハードルは高く、この要件を満たすのは児童思春期外来に特化した医療機関しかない。社会的ニーズから児童思春期にも力を入れている診療所、病院も増えており、今後は施設要件の緩和、あるいはその基準の抜本的見直しが求められるものである。
従来、うつ病に限って認知療法・認知行動療法が算定されていたが、今改定で強迫性障害、社交不安障害、パニック障害、心的外傷後ストレス障害もその対象となった。もちろん、それぞれの治療用マニュアルに従って厳密に実施された場合のみの算定である。また、うつ病などの気分障害に対しては、要件をみたす医師と看護師が共同で行う場合も算定できるとされた。この際の認知療法・認知行動療法については施設基準が設けられ、その要件は厳しく、現実的ではないと考えられる。しかし、着実に精神医療の中で技術としての認知療法・認知行動療法の評価と傾斜が見て取れる改定である。
今回の改定で精神科医が一様に驚いたのは、抗精神病薬3種類以上または抗うつ薬3種類以上処方されている場合の通院・在宅精神療法の減算定だろう。前回改定では多剤投与で処方料・処方せん料、薬剤料、精神科継続外来支援・指導料が減算定の対象だったが、今回はこれに加えて精神科医療の根幹である通院・在宅精神療法にまで踏み込んだのである。ほとんどの精神科診療所、病院外来などはその除外要件を満たし、実質的な影響は避けられるものと考えられる。しかし、問題の所在は薬物とは無関係であるはずの在宅・通院精神療法を減算定するという強引な改定手法にある。向精神薬の投与なく在宅・通院精神療法を施行している患者さんも多いのである。さらに精神療法のひとつである認知療法・認知行動療法は対象外であることはどうなのか。今回のような権柄尽くな方策がペナルティのように常套化されていくことに強い懸念を覚える改定である。
皮膚科軟膏処置の減点に注意を
皮膚科 経営部会理事 山田一雄
今改定では皮膚科領域では大きな改正はなかったため、今回据え置きとなった皮膚科軟膏処置の審査についてまとめてみた。
皮膚科軟膏処置とは実際に患者に薬剤の説明、塗布の方法など指導に対する対価として算定するが、部位の記載漏れで減点の対象になることが多い。
例えばアトピー性皮膚炎のような全身が対象となる場合、皮膚科軟膏処置はどの範囲で算定するのかは実際に塗布した範囲や使用薬剤の量で算定する。
審査の側からみるとこのような部位の記載がない、または全身と推測できる場合は査定対象とし、減点もしくは不必要と判断するのは理解できる。
では、減点を回避するためにどうすればいいのかを考えた時、先に書いた記載漏れをなくすことで解決できるのではないだろうか。
レセプトを作成する際に実際に塗布した部位を記載する。この手間によって減点される件数が変わってくることがある。今回、据え置きとなって収益増が見込まれないような場合は、せめて減点を防ぐことが重要になるのではないだろうか。