シリーズ環境問題を考える(130)
福島の核汚染の実態を見据え直そう
プルトニウムはどこヘ?
「福島原発事故直後、トモダチ作戦として、空母USS Ronald Reaganで事故処理支援作業に従事させられた米海軍の兵士たちの多くが、その後、放射線被曝に酷似した、共通の症候をあらわし、すでに3人が白血病やがんで死亡した。また、ある海兵は事故後父親になったが、その子は脳に腫瘍を抱えており、今年3月、生後2年で死亡した。被害者のうち250人が、東電および原発建設に参加したGE、EBASCO、東芝、日立に対し集団訴訟を起こし、自らのみならず、遺伝的変異が拡散しかねない自分たちの子孫の分まで補償を求めている。
米軍当局は、被曝量は軽微で関連性はないと声明している」と報道されている。
福島県では、事故による、放射性ヨウ素131を含む大量の放射性物質の飛散により、子どもたちに内部被曝による甲状腺がんの多発が危惧され、0歳から18歳の子どもたち約37万人全員を対象に、福島県民健康調査として、甲状腺の検査が進められてきた。これまで、2016年3月31日までで172人の甲状腺がんおよびがんの疑いの子どもたちの存在が明らかになっている。先行検査と本格検査を通しての、発生率の比較では、10万人当たりの1年間の患者発生率は先行検査で7・7〜11・7人/年、本格検査で35・4〜80・5人/年とされ、原発事故後に発症した子どもの甲状腺がんのうち67%以上が原発事故によるものであると推定され(宗川吉汪氏ら『福島原発事故と小児甲状腺がん』本の泉社)、チェルノブイリの経験からは、今後の激増が心配される。しかし、ここでも、県当局や政府は原発事故の影響は認められないと公言するのみである。
また、放射性ヨウ素の他、半減期31・1年超期間、β線を出し続けるセシウム137は、1・5×10の16乗ベクレルと、実に広島原発約168発分もの途方もない量が放出されたが、その陰で、意図的に隠蔽されてきた感のあるプルトニウム239汚染による内部被曝がもたらす健康被害の顕在化も気がかりである。
東京電力の福島第一原子力発電所の1〜3号機は、事故直後から炉心溶融(メルトダウン)を来していたが、また、爆発した3号機は、原子炉に入っている数百本の核燃料集合体のうち、3分の1に、ウランにプルトニウムを混ぜたMOX燃料を使っていた(プルサーマル)ため、76兆(10の12乗)ベクレル以上もの、想像を絶する大量のプルトニウムがばらまかれた。一部は、上昇気流にのって、東京や、シアトルなどアメリカ本土までを汚染したことが判明している。
プルトニウム239は、半減期2・41万年、吸入すると、ホットパーティクルとして、放射されるα線によりDNAを損傷し、肺がんや、骨肉腫や、白血病を誘発する、内部被曝における最も危険な核種とされている。プルトニウムは、喫煙者では、発がんリスクが極めて高くなることが知られている。『原発事故…その時、あなたは!』という本を残し、原発事故の恐ろしさの詳細なシミュレーションを示して下さった、愛煙家の故瀬尾健先生が、プルトニウムに汚染されたチェルノブイリの現地調査に身を挺した数年後、肺がんで亡くなられた、悲しいできごとを思わずにはおれない。
今一度、政府や東電の隠蔽を許さず、プルトニウムを含めた多くの放射性物質で汚染された、福島の大地の、深刻な実態と現状を見据えなおす必要がある。
福島の子どもたちや県民の健康を守る真剣で有効な手立てを一緒に打ち立てていかねばならないと思う。
福島の現実を隠蔽して、地震列島の上で、原発の再稼働を進める政府の暴挙が許されるはずがない。
(環境対策委員・島津恒敏)