2016診療改定こうみる(6)
短手3 白内障手術の減点影響大きく
眼 科 政策部会理事 辻 俊明
手術においては、短期滞在手術等基本料3の見直しがあった。通常白内障手術は眼内レンズを挿入するが、入院4泊5日以内で片眼行うと、1回あたり従来27093点であったのが、22096点に減額となる。この入院期間で両眼手術を行ったとき、従来は片眼手術と同じ点数(27093点)しか算定できなかったが、今回は両眼での点数37054点が新設された。このため短期の入院で両眼とも手術を希望する患者さんに対応できるようになった。出来高払いでの点数に変化はなかった。白内障手術は眼科手術の中で最も件数が多いので、ここが減点された影響は大きい。
一方で、専門度の高い手術の点数が引き上げられた。難易度の高い白内障手術には、水晶体嚢拡張リング使用加算1600点が新設され、羊膜移植術は6750点から8780点に引き上げられ、眼窩骨折整復術は26520点から29170点に引き上げられた。しかしこれらの手術を行う施設は限られ、手術件数も少数である。
2017年4月からの適応となるが、コンタクトレンズ検査料にも変更がある。従来はコンタクトレンズ検査料1と2に分かれていたものが、1から4に細分化され、その結果、点数は現状維持の場合と、引き下げられる場合が出る。コンタクトレンズ検査料を算定した患者数が年間1万人を超えた場合は、検査料1を算定している診療所では200点から180点に引き下げられる。しかし、このように多数のコンタクト患者が来院する診療所は少数である。
診療所で日常的に算定している屈折検査にも変更があった。従来は年齢に関係なく69点であったが、今回の改正で6歳未満とそれ以外の2種に分けられた。どちらも69点で点数に変わりはないが、将来差異をつけるための素地であるという解釈もできる。
必要な疾患に指導管理料新設を!
耳鼻咽喉科 京都府耳鼻咽喉科専門医会 保険医療委員 奥村雅史
2016年の診療報酬改定は、厚労省の発表によると、診療報酬本体はプラス0・49%で、薬価と材料価格の見直しがマイナス1・33%となり、医科の改定率がわずかにプラス改定となった。今回の改定は、2025年問題(いわゆる「団塊の世代」が全て 75歳以上となる)に向けて、少子化と超高齢社会での医療を維持するために、医療の「役割分担」が大きなテーマになっている。乳幼児、認知症、大病院と地域の診療所などが対象となる。
耳鼻咽喉科においては外来での処置や検査に特に大きな改定はない。インフルエンザなどの検査の際、上咽頭からの検体採取に対して「鼻腔・咽頭拭い液採取」(5点)が新設された。また、手術に関するものでは新たに五つの手術法が新設された。内視鏡下鼻中隔手術1型(骨、軟骨手術)5520点、内視鏡下鼻中隔手術2型(粘膜手術)2030点、内視鏡下鼻腔手術1型(下甲介手術)5520点、内視鏡下鼻腔手術2型(鼻腔内手術)3170点、内視鏡下鼻腔手術3型(鼻孔閉鎖症手術)19940点である。前回2014年の改定時に内視鏡下での鼻・副鼻空手術の新設と合わせてほとんどすべての鼻・副鼻空、鼻中隔の内視鏡下での手術が新たな手術法としてまとめられたことになり、評価できる。
一方、2010年に減点された標準純音聴力検査や喉頭ファイバーなどの点数回復はいまだになされていない。これらは実施頻度の高い検査であり、その評価が引き下げられたままである。また、医学管理料では滲出性中耳炎に対して「耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料」があるだけである。突発性難聴やめまい症など、その投薬管理や生活指導など手間のかかる疾患に対して指導管理料が認められていないのは残念であり、その新設を強く希望する。