主張/自由開業制が医師偏在の原因ではない!
2017年度開始が目指されている「新専門医制度」について、社会保障審議会・医療部会で、この制度の実施によって地方の中小病院から医師の引き揚げが起こり新たな地域医療崩壊につながりかねないとの意見が噴出し、部会の下に専門委員会を設置し検討することが2月に決まった。
「医療提供体制における専門医養成の在り方に関する専門委員会」第1回会議が3月に開かれ、自治医大の永井良三学長を委員長に17人の構成で議論が始まった。
冒頭で神田医政局長から「プロフェッショナルオートノミーを基盤として中立的な第三者機関にお願いするべき。行政はあまり出過ぎないようにと認識しているが、この制度ができると専門医は広告可能にするという制度の改正も必要。17年度は1億9000万の予算で支援もするので、全く民間の自主的な仕組みとは次元の異なるもの…」との挨拶が述べられた。
4月の第2回会議で、委員長私案として「新専門医制度に関する論点」が示され、「専攻医数の募集枠の設定」の項目で専攻医が都会に偏在しないように、需要に応じて診療科毎かつ都道府県毎に定員を設定する必要がある、と明確に打ち出された。
一方で、昨年末から「医療従事者の需給に関する検討会」が開かれ、特に医師需給分科会で偏在対策中心に議論される中で、青森県の健康福祉部長(厚労省から出向中)から「専門医を目指す専攻医の募集定員や指導医の必要数を診療領域毎、都道府県毎に設定し、それを超える専門医の保険医登録を認めない」との意見が出された。
そして、塩崎厚労大臣が専門医の地域・診療科の定員枠設定や診療所の管理者要件、保険医の配置・定数設定に言及するなど、今や医師の偏在をどうするかが議論の中心となり、専門医制度はそのためのツールとして論じられる形になった。
我々が当初から危惧していたように、医師の在り方を国としていかに管理すべきかの議論が展開されており、大いに問題である。
全ての国民は強制的に保険加入が義務づけられ「いつでもどこでも誰でも」保険証一枚で同じ医療を受けられる日本の皆保険制度だが、実際の医療提供は民間の自由開業制に頼っているという根本問題がある。医師が自己責任で資金調達を行い病院や診療所を開設し、本来なら保険者が提供すべき保険診療を請け負って地域の人々の医療需要に応えて貢献してきた。
医師偏在の原因は極めて明快である。業として成り立たない仕事を選ぶ者はいない。まともに医業が成立する環境整備を切に望む。