理事提言/「町医者」こそが日本の医療支える原点
保険部会 種田征四郎
記憶によると、小泉内閣の時代から、経済財政諮問会議とか、規制改革会議といったものがやかましく言われだし、「お上」による改革と大上段に振りかざして私たちに迫ってきたように感じます。今、問題になっている総合診療専門医にしてもそれを開業医に義務付けろといった思想が気になります。後藤田正純内閣府副大臣(2013年当時)の発言「規制改革会議は……医師の専門性といいますか、レベルといいますか、そういうのをちゃんと評価して、結局それが国民医療の幸せにつながると、こういう考え方だ……努力する医師、もしくは病院に対する評価が、今の日本の医療制度は非常に低いと、私も思っています。一方で、努力しない人たちが結構な収入を、そういう病院や医師には既得権を打破すべく規制緩和していくという、この二つの方向が私は重要だと思っています」「総合診療医、これは今でいう町医者に義務付けるべきだと私は思っていて……町医者がいっぱいいて、がんばって金もうけしているのだけれども、国民生活に何らプラスになっていない。……そこらの町医者に総合診療医としてもう一回試験を受けさせて、そしてそれで総合診療医A、B、Cとランクをつけて、診療報酬もしっかりそこで分けるべきだし、先ほどの医療計画とか病床数の問題、診療報酬の問題、ここらは医者のレベル、そしてその医者をしっかりコストをかけて雇っている病院を評価する、こういう仕組みに変えていかなければいけないと私は思います」。
厚労省官僚、規制改革会議のメンバーなど、いわゆるエスタブリッシュメント側の考え方の独特のにおいを感じます。「お上」に逆らうなという思想でしょうか。専門医制度が大きく転換されようとしていますが、実はこの制度の真の狙いはそこいら当たりにあるような気がしてなりません。
当協会では、保険診療に対する個別指導・監査の改善に腐心しています。昨年6月の協会と近畿厚生局との懇談も、まさしく「お上」からの通達を伝えるような感じでしたが、弁護士帯同、録音が可能であることを、公に認めました。今から20年前、富山県で一保険医が「お上」からの冷徹な個別指導により自殺事件がおきました。人を人として扱わない、上から目線の発言。何か大きな力の前でひれ伏さなくてはならない、そんな思いが浮かんできます。
先の規制改革会議のメンバーは「町医者」とあたかも一段下のように蔑んでいっていますが、こういった第一線の開業医が日本の医療を支えて、日本の医療レベルを保っていることに思いを寄せたいものです。