医師の診る風景 和束より(5)
柳澤 衛(相楽)
「ふれあい」報告
和束町福祉課と地域包括では「ふれあい」という地域での交流会を開催しており、私もお手伝いをしています。
開催するきっかけの一つはデイサービスで女性のテーブルに1人おられて悦に入っているFさんがはじめられた、勝手に集まり、カラオケを歌う会です。地域の高齢者でもお互いに好き嫌いがあるようで、行政もなかなかまとめようがなかったみたいです。自然発生的にできた会を、各地域に広めていきました。そこへ3年に一度お話をしに行きます。
湯船地区があります。信楽町の隣にあたるところです。和束町でも一番の奥まった地域です。旧湯船村で林業が主な生業でした。この地域の過疎化は和束町でも一番進行しています。ここでも3カ所で「ふれあい」が開催されます。5人と8人と15人ぐらいの参加です。開催場所は公民館です。過疎でもこのような公共の集会所はあります。選挙投票に利用したりしています。
認知症の話、脳梗塞について、骨粗しょう症の話をしました。ふれあいといってもほとんどが高齢女性の参加です。「認知症にはなりたくないけど怖くないですよ。脳梗塞でも早期治療がありますよ。骨粗しょう症で頚部骨折しても寝たきりにはならないが不便になりますよ」。このような話題でお茶を飲みながら約1時間お話をします。参加者からは普段、医師に聞きたいと思っている質問等を受けます。
男性高齢者の姿が見えません。男性配偶者をなくされたような超高齢者が多いのも要因ですが、男性の居場所が田舎には少ないです。囲碁将棋なら屋内でするけれども、おしゃべりをされる方はおられません。その囲碁将棋もされる方がめっきり減りました。ゲートボールも今では後継者不足です。新規参入者がなく、グラウンドゴルフをされるようです。男性は少しの畑で野猿や鹿の害と格闘しながら野菜つくりをされています。1人での畑仕事は農家の方はなれておられるようです。人と話をすることがボケ防止のための一番の良薬なのですが。少し寂しいことです。