主張/違和感のある小児かかりつけ診療料  PDF

主張/違和感のある小児かかりつけ診療料

 今回の診療報酬改定では、かかりつけ機能を評価する項目が新設されている。小児かかりつけ診療料もその一つである。施設基準・算定要件は、時間外対応の部分を除き、ほとんどの小児科診療所はこれを満たしているであろう。つまり小児科診療所は十分かかりつけ医なのである。さらに「通常の診療に加え、夜22時くらいまでは自院に通院する患者さんに対応すればかかりつけ医として認める」ということである。

 これは当然のことなのだろうか? ただでさえ忙しい日常診療に加えて「常時対応」を迫られる心理的・身体的負担は大きい。勤務医時代は急病診療所に出務すると、患者の約9割は小児であり朝までずっと働いていたものだ。「常時対応」の看板をあげれば、感染症等の急性疾患の多い小児科では頻繁に連絡がくることは必至である。簡単な投薬や点滴くらいは、自院で対応するようになり、時間外診療が常態化する可能性もある。患者のためとはいえ、それはやはり不自然でどこかで休める状況がないと疲弊してしまうと思う。

 もう一つ違和感があるのは患者との同意書である。これでは患者に心理的な強制力が生じてしまう。関係が良好な間はよいが、うまくいかない場合にそっと離れることができなくなる。トラブルを避けるため患者が何も言わず他の医療機関との間で同意書を交わした場合、患者は必要であっても最初の診療所には受診しにくくなるだろうし、二つの医療機関で診療料が算定された場合は、診療報酬請求時に返戻となって、医療機関同士で話しをつけるということになりかねず、医療機関同士の関係もこじれてしまうことも起こり得る。地域連携を推進するどころか逆効果である。

 小児科診療所はかなり頑張っている。時間外対応を無理強いせず、主たるかかりつけ医を中心に緩やかに地域がつながれるように、医師と患者の関係を一つに固定することなく、小児科の診療報酬自体を評価してもらいたいものである。

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