「新専門医制度」めぐる厚労省との懇談 —1面つづき
協会は「新専門医制度」を巡る会員の不安や疑念の声を、要望書「『新専門医制度』ならびに医療・介護サービス提供体制改革について」としてまとめ、厚労省と懇談を実施(1面)。要望項目にしたがって意見交換を行った。
まず、実質的に大学病院・大病院が基幹研修施設となることで医師の一極集中が起こるのではという懸念については、機構は大学病院のみのプログラムは認めないなど、地域医療に配慮している。今、機構はプログラムを審査し、例えば従来研修医を受け入れてきた施設が漏れている場合、実績がある施設が連携施設になっていない場合をチェックし、基幹病院と連絡・調整している。施設だけでなく、二次医療圏単位の漏れにも留意している。国としても去る1月15日に都道府県に通知(専門研修プログラムの認定に向けた各都道府県の役割について)を発出。「地域の関係者による協議の場の設置」等をお願いした。基幹施設と連携施設でのローテーションの在り方は「協議の場」で議論することになるだろうと述べた。
また(専門医取得の)義務化や、機構による「must」との表現は、機構はそうしたいと思っているかもしれないが、「専門医制度」は法令に基づくものでなく、取得しなければ仕事ができないわけではない。「専門医の在り方に関する検討会報告書」(13年4月22日)には「医師は基本領域のいずれかの専門医を取得することを基本とすることが適当」とあるが、新卒医師が念頭で、今35%いる専門医資格のない医師が全員専門医にならねばならないわけではない。
更新について外科系専門医が高齢になると症例数を満たせなくなり、事実上定年になるとの懸念については、今後のサブスペシャルティの議論とも関連するのではないかとの認識を示した。
専門医資格と診療報酬・広告制度のリンクについて、診療報酬の議論は現状では出ておらず、広告制度の議論も始まっていない。それらによる事実上の義務化を懸念しているようだが、現時点では既定路線ではない。広告制度については在り方報告書に明記されており、今後検討することになる。
一方、診療報酬については、個人的見解だが、「専門医制度」が現時点では法令等に基づいた国の制度でなく、結びつけて議論するのは難しいのではないかとの考えを示した。
総合診療専門医創設に関連し、開業医の役割をどう考えているかについて厚労省は、開業医は地域に根差し、非常に重要だ。総合診療専門医と開業医との違いについて、開業医はいずれの標榜科にせよ、地域の方々に密着した役割を持つ。総合診療専門医は一つの領域に止まらず、幅広い疾患を診ることをプログラムで身につけて他の診療科とも連携・協力していく役割を負う、とした。
一方、都道府県の策定する地域医療構想については、「偏在」がある現状に基づいたレセプトを根拠に推計すれば、「偏在」が固定化するとの指摘の趣旨はよく理解する。2025年の推計値を現状と見比べて調整会議で議論することこそ重要である。推計値は病床削減目標ではないとコメントした。
協会は、今の後期研修の下では、医師は3年といった単位で研修しており、「新専門医制度」の研修プログラムの短期ローテートとは違う。連携施設になると医師の在籍期間が短縮する恐れがある。患者さんの認知度やチーム医療の意味でも、違う。そこにリアリティを持ってほしいと求めるなど、厚労省が地域に広がる不安との認識の距離を埋めるように求めた。
懇談後の3月25日、社会保障審議会・医療部会の専門委員会の第1回会合が開催された。報道によると、厚労省が専門医の養成開始に向け、都道府県による研修プログラムの調整支援などに関与していく考えを示す一方、全日本病院協会会長から「医療部会での議論も踏まえ、制度を白紙に戻して基本的なことから議論すると思っていた」「もう一度根本に戻って基本的な議論をすべきではないか」との指摘もあったという。
協会は、引き続き「新専門医制度」の地域医療への影響を危惧する現場の声を国へ届けるとともに、医師の在り方の根本転換につながる動きに対し、必要な批判提言を進めていく。