主張/何のための専門医資格か?!
総合診療専門医を含めた「新専門医制度」が議論される中、私は最近、専門医資格を取得する本来の目的は何なのかを考える。ちなみに私は専門医資格を取得していない。取得することで自分は何を得るのか、得ることで何がしたいのかという、それぞれの医師がもつ価値観かと思う。
資格を取得する最初の目的は、医学として科学的な観点から、本質を見極めたいという欲求や、自分の持つ技術(診断、治療、手術等)を極めていきたいといった欲求ではなかったか。このことは、最終的には患者さんをしっかりと治したい。命を守りたいといった純粋な気持ちからではないかと思う。従来の専門医制度の当初の理念も、こういった崇高な立場だったのではないかと思う。
しかし、そういった医師の持つ純粋な気持ちをうまく利用されていないだろうか。今進められている「新専門医制度」では、初期臨床研修終了後、総合診療専門医資格を取得するか、それ以外の18の基本領域の専門医資格を取得するかを選択し、一旦その道を決めると、新たに基本領域の専門医資格を取得しようとしても、現実には不可能である。また、日本専門医機構は資格取得を「must」だと明言している。国は総合診療専門医をゲートオープナーとして患者のフリーアクセスを制限したり、「新専門医制度」を利用して医師数の削減など、医療費の抑制に使おうと考えている。このような様々な問題をはらんだ「新専門医制度」をこのまま進めさせてもいいのだろうか? 本来私達が目指していたスキルアップとそれに基づいて患者の健康、命をまもるという崇高な目的を忘れてはいないだろうか? 本来の目的からどんどんかけ離れたものになってはいないだろうか? これから未来の医療、医師制度を守るために、今進められている「新専門医制度」を見直す必要がある。