中医協答申に対する談話
地域医療、在宅ケア充実程遠く「より安く」では国民医療は守れない
中医協は2月10日、厚労大臣に対し16年度診療報酬改定について答申した。今回の改定は「地域包括ケアシステムの推進」と「医療機能の分化・強化、連携」を重点課題としている。前回改定に引き続き25年に向け、急性期病棟だけでなく回復期リハ病棟、療養病棟、有床診療所を含めた入院医療機関全体の機能再編を進めるとともに、患者を在宅へ押し出す流れを強めている。
外来で「かかりつけ医」機能を強化
外来では「かかりつけ医」機能の強化を推進する。ゲートオープナー機能とリンクさせ、患者のフリーアクセスを制限することにつなげてはならない。在宅医療では在医総管・特医総管を組み換え、月単位で単一建物で何人診療したかにより点数設定(下図参照)したため、在宅医療を担う保険医の意欲を下げ、混乱をもたらしている。投薬では減薬の評価、後発医薬品使用促進、向精神薬多剤の算定制限の強化等、薬剤費の削減策を強化した。
協会の改善要請が実現
そのような状況の中で、?入院中の患者の他医療機関受診の際の減算率が緩和?同一患者に対して二つ以上の異なる医療機関で異なる疾患の在宅自己注射指導管理を行った場合にそれぞれ算定可能?1カ月27回以下の自己注射を行う患者の同指導管理料が引き上げ等、協会の改善要請が実現した。また、?同一建物居住者の訪問診療料が203点に統一?在宅訪問点滴注射管理指導料が引き上げ?検査で静脈採血料が5点引き上げ?皮内・皮下・筋肉注射、静脈内注射、点滴注射料等が引き上げ?施設基準における産休・育休等の常勤の定義 等の改善点があった。少ない財源の中での厚労省の努力は、一定評価したい。
厚労省 視点は「より良くより安く」
一方で、今回の改定は、15年6月に厚労省が公表した『保健医療2035』の視点を取り込んでいるのも特徴だ。同提言は「これからの保健医療システムを考える上で、より良い医療をより安くというコンセプト(リーン・ヘルスケア)が重要だ」というビジョンを打ち出している。
だが、地域医療、在宅ケアの充実のためにはお金が必要だ。効率化の追求はすでに限界に達している。小泉政権時代の連続マイナス改定により地域医療が疲弊したことを忘れてはならない。今回、本体改定の引き上げ率は0・46%に留まり、薬価改定による引き下げ分でさえ充当されていない。
同時改定での大幅引き上げを目指して
次回18年度は医療・介護の同時改定が予定されている。安倍政権が打ち出した「介護離職ゼロ」の実現のためには、介護サービス提供施設、介護職員に対する十分な介護報酬が必要だ。同時改定では大幅な引き上げを勝ち取らなければならない。
なお、診療報酬、介護報酬の途中改定が必要となるため、17年度に予定される消費税率の引き上げは行うべきではないと考える。
2016年2月28日
理事長 垣田さち子