代議員月例アンケート(91)マイナンバー制度について  PDF

代議員月例アンケート(91)マイナンバー制度について

対象者=代議員91人、回答数36(回答率40%)
調査期間=2015年11月16日〜30日

 2016年1月より、まずは社会保障、税、災害対策の3分野で運用が開始された「マイナンバー制度」。これにより医療機関は、従業員(パート・アルバイトを含む)やその扶養家族から「マイナンバー(個人番号)」を取得することになり、特定個人情報を取り扱う「個人番号取扱事業者」として、その適正な取り扱いが求められるとともに、社会保障や税務関係書類への番号記載等の責務が課せられることになる。そこで今回は、さまざまな問題が取りざたされる「マイナンバー制度」に関し、医療機関での対応の現状等についてたずねた。アンケートは、制度の周知も含めた設問としたところ、回答率は40%に達し、「マイナンバー制度」運用前である11月時点での準備状況が浮き彫りとなった。

制度の学習約4割が未対応

 「マイナンバー制度」について、担当税理士等から制度の説明を受けたり、関連のセミナーや講習会に参加したかをたずねたところ、自身での資料収集を含め、半数以上の56%が既に学習していたが、約4割が11月時点で未対応との回答であった。(図1)

「税理士等に委託できる部分は委託」が半数以上

 医療機関での「マイナンバー制度」への対応については、「税理士等に委託できる部分は委託」が53%で半数以上と一番多く、「税理士等に全て委託」の14%と、あわせて税理士等の協力を得るとした回答が7割近くを占めた。一方、「自院で全て対応」は8%で、「検討中」との回答も約2割あった。(図2)

「安全管理措置」および「委託先の監督」は義務

 自院で対応する場合は、適切な「安全管理措置」(特定個人情報等の管理)が必要で、税理士等に委託する場合においても、「委託先の安全管理措置が適切に講じられているか、監督が必要」であることについては、「知っている」が56%、「知らなかった」が42%であった。「マイナンバー」は取得すれば義務として適切な「安全管理措置」が、税理士等に委託すれば委託先の監督が求められるので留意が必要。

従業員へ基本的な事項6割以上が通知

 従業員に通知カードが届く時期や「マイナンバー」が何に使用されるかなど、基本的な通知をしたかたずねたところ、「事前に知らせた」が39%、「これから知らせる」が22%と、6割以上が通知するとの回答であった。

 一方、「知らせていない」は33%あり、11月時点ではまだ対応していない医療機関も多いように思われた。(図3)

「利用目的の明示」約8割が対応

 「マイナンバー」を従業員から取得する際の利用目的(「源泉徴収票作成」「健康保険・厚生年金保険届出」「雇用保険届出」等)の明示の必要性については、「知っている」が78%、「知らなかった」は22%であった。

 また、「利用目的」を配布や院内掲示等で通知したかは、「既に通知した」が19%、「これから通知する」が50%と約7割が対応しており、「通知しない(取得しない)」は22%であった。(図4)

「取扱い事務担当者」7割が決定

 「マイナンバー」を取り扱う事務担当者については、「既に決めている」が39%、「税理士等に任せる」が31%と7割が担当者を決定。「これから決める」は19%であった。(図5)

“本人確認”の必要性「知らない」約4割

 マイナンバーを従業員から取得する際には、個人番号の確認と身元確認が必要で、その本人確認においては、(1)顔写真の付いている「個人番号カード」(任意の申請により2016年1月以降、各市町村にて配布)か、(2)「通知カードもしくは番号付き住民票」と「運転免許証もしくはパスポート」などで確認を行う必要があることについては、「知っている」が58%、「知らなかった」は39%であった。

“安全管理措置”「知らない」2割以上

 マイナンバーが記載された書類は、鍵がかかる棚や引き出しに大切に保管しなければならず、マイナンバーをパソコンで保管する場合は、ウィルス対策ソフトを最新版に更新するなどセキュリティ対策が必要となるが、これらの特定個人情報等の管理における安全管理措置については、「知っている」が72%、「知らなかった」は25%であった。

 また、その準備をしているかたずねたところ、「既に準備している」が31%、「これから準備する」が47%、「準備しない(取得しない)」は14%であった。(図6)

“廃棄”の必要性「知らない」が約半数

 従業員の退職や契約の終了などで「マイナンバー」が必要でなくなった場合や、所管法令において定められている保存期間(例:税関係は7年)を経過した場合には、細かく裁断するなどマイナンバーの書いてある書類を廃棄しなければならない。パソコンに入っているマイナンバーも削除が必要であることについては、「知っている」が50%、「知らなかった」は47%であった。

 また、このマイナンバー業務の一連の流れを自院で確認(決定)しているかの問いには、「既に確認(決定)している」が14%、「これから確認(決定)する」が58%、「対応しない」は17%であった(図7)。「マイナンバー」の取得・保管・廃棄等においては、いつ、どうしたかを常に記録として残すことが大切である。

医療分野への利用拡大「反対」約半数

 医療分野では、2017年7月以降のできるだけ早期に「個人番号カード」に健康保険証の機能を持たせ、医療機関の事務の効率化を図るとしてマイナンバーの利用が検討されている。また、医療機関や研究機関での患者データの共有や、追跡に利用可能な「医療ID」は、18年度から段階的に運用を開始。20年の本格運用を目指し、マイナンバーのインフラを活用して紐付けする方向で、検討を進めている。さらに、9月3日には法の施行を待たずして改正マイナンバー法が成立し、特定健診や予防接種への利用が決定したが、このような医療分野へのマイナンバーの利用拡大に関し、賛否をたずねたところ、「賛成」11%、「反対」47%、「どちらともいえない」39%であった。(図8)

 また、その理由について、「賛成」では「利便性」「期限切れの保険証による受診が多いから」「事務手続きの合理化で役所の人員削減が可能」との意見。

 「反対」では「個人情報流出の危険性、国による個人医療情報の管理」「個人情報保護の責任を各診療所で行うのは負担が大きい」「医療が医療以外の理由で制限されそう」「私たちはナンバーの付いた物ではないと思います。生きることは自由であり、何かに拘束されることではありません。反対です」との意見が出された。「どちらともいえない」では「始まらなければ良く判らない」「セキュリティ問題が不明」「便利な部分もあるが、不安要素も大きい」「予防接種歴の管理、複数検査・投薬の予防には有効かもしれない」など、多くの意見が寄せられた。

 その他、意見・要望では、「効率化、ムダをはぶくという点に対しては良いと思うが、どういう範囲までみるかというセキュリティに不安がある」「適正な所得税を課すための所得の把握目的に限定すべき」「マイナンバーは役所にとって利便性の多いシステムで、利用者にとってではない。それなのに管理は利用者にまかせるという運用方針は無理がある。故意ではなく過失による漏出まで利用者に責任をとらせるというのであれば、これほど無理な話もあるまい」「必要性は理解しますが、それに関連して取扱いをあまり複雑化しないこと」など、問題点の指摘もあった。

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