2016年 京都市長選挙予定候補者への要望事項  PDF

2016年 京都市長選挙予定候補者への要望事項 

 協会は2月7日に行われる京都市長選挙(1月24日告示)を前に、協会の要望を1月14日付で取りまとめ国民皆保険制度の重要性を訴えるとともに、住民の健康といのちを守る市政を行ってほしいと要望している。以下、全文を記載する。京都市長選挙に立候補を表明しているのは次の各氏。本田久美子氏(無所属・新)、三上隆氏(無所属・新)、門川大作氏(無所属・現)(表明順)。

1.国民皆保険を守り、拡充させるための要望

 いつでも・どこでも・誰でもが保険証1枚で必要な医療を必要なだけ保障される国民皆保険制度は1961年に実現しました。

 その基盤である市町村国民健康保険制度は、他の公的医療保険と違い、事業主負担が存在しないこともあり、もともと財源が脆弱な仕組みです。さらに今日、年齢構成に起因する医療費水準の高さ、加入者の所得水準の低さ、小規模保険者の不安定な財政運営等の構造問題を抱えています。

 私たちは、国民健康保険は本来、生存権保障のための社会保障制度であり、国の責任における構造問題解決がはかられるべきと考えます。

 しかし、1984年の改正国保法以降、国庫負担率はむしろ引き下げられ、問題解決を遠ざける要因となってきました。

 その結果、保険料は高額となり、払えない世帯が増加し、保険料収納率も慢性的に低い水準で推移しています。

 そうした中、保険者である市町村は財政プレッシャーに晒され、あたかも保険料収納率向上が国保行政であるかのような運営の在り方に追い込まれています。資格証明書交付や財産差し押さえが、それを象徴しているのではないでしょうか。

 公的医療保険制度が強制加入の仕組みであることは、裏返せば、それが社会保障の仕組みであるからになりません。保険料の収納状況や窓口一部負担金の支払能力によって、医療サービス給付が左右されることは決してあってはなりません。

 国民皆保険を守り充実させること。誰もが費用の心配なく、医療を受けられること。その実現をめざす姿勢が、すべての自治体首長に求められています。

 これは、国保が都道府県化されても、何ら変わることはないと考えます。

 つきましては、下記の諸点を要望するものです。

(1)被保険者資格証明書交付、 滞納処分(財産差し押さえ)を中止すること。とりわけ、子どもたちの将来の希望を摘み取る学資保険の差し押さえは行わないこと

(2)滞納を発生させない、支払い能力に応じた国保保険料を実現すること

 1)当面は、一般会計からの法定外繰入を継続すること

 2)保険給付に対する国庫負担率引き上げの実現を国に求めること

 3)国民健康保険法第44条の適用を拡大し、窓口一部負担金が支払えないことを理由とした受診遅れを根絶すること

 4)将来的には、医療保険制度の全国単位の一元化を実現し、保険料負担については完全応能制とし、窓口一部負担金は廃止すること

(3)子どもたちの受診抑制を解消するため、京都子育て支援医療助成制度の対象を拡大し、外来・入院ともに、中学校卒業まですべての子どもの医療費窓口負担を200円とすること

(4)現在、国が検討している後期高齢者医療制度の窓口一部負担金の2割化や、高額療養費制度の見直し等、患者負担増に反対するとともに、万一実施された場合は、地方自治体としての救済策を福祉制度として実施すること

2.市民の医療・福祉保障を前進させるための要望

 京都市は、2015年11月に公表した「はばたけ未来へ! 京プラン 後期実施計画(骨子)」で、市の財政状況を「本市財政は,市民1人当たりの市税収入が少なく財政基盤がぜい弱なうえ,地方交付税・臨時財政対策債が大幅に削減され,一般財源収入がピーク時から大幅に減少し,回復しない状況」と指摘しています。

 自治体財政の困難は全国的に拡大しているようです。

 その背景には、「地方分権(地域主権)改革」による、義務付け・枠付けの見直しやひもつき補助金の一括交付金化等による歳入減があります。

 税収の落ち込みは、自然と自治体自らを歳出削減や歳入増のための「行財政改革」=自治体リストラ推進へ追い込みます。

 それに加え、「自治体消滅論」や首都圏の経済成長の足かせとなる高齢者の福祉ニーズを「移住」という形で解消しようとする「地方創生論」によって、自治体の基盤そのものが脅かされ、困難と混乱に追い打ちがかけられています。

 しかし、このような状況にあってこそ、自治体の値打ちが問われています。

 流れに抵抗し、地方自治体の本旨を守り抜こうとするのか。

 流れにのって、「改革」を進めるのか。

 地方自治体の政策が、そのどちらの道を選択するかによって、住民の生活は大きく変わってしまいます。

 京都市は、戦前から全国に先駆けて、障害のある人や子どもたちを対象とした福祉・医療施策を独自に展開してきた自治体です。

 京都市が、国の改革方向に引き摺られ、その蓄積を損ねてしまわないことを、心から願っています。

 つきましては、下記の諸点を要望するものです。

(1)財政リストラを目的とした、京都市地域リハビリテーション推進センター・京都市児童福祉センター・京都市こころの健康増進センターの3施設合築方針は中止すること

(2)京都市地域リハビリテーション推進センターのリハビリテーション提供機能の強化、地域リハビリテーション事業の一層の推進、セラピストの専門性の担保に向け、附属病院機能を復活させること 

(3)京都市児童福祉センターの児童相談所機能・発達相談センター機能を拡充すべく、専門職を公務員として大幅増員すること。また、高まる児童発達支援ニーズに応えるべく相談から療育に至るまで、ワンストップで受けられる公立施設を地域レベルに増設すること

3.高齢期の福祉保障推進のための要望

 2014年に国会成立した医療・介護総合確保推進法における改正介護保険制度によって、京都市でも2017年度から要介護認定における要支援1・2に該当する人の、介護予防訪問介護並びに介護予防通所介護が「新しい総合事業」に移管されることになります。要介護認定が介護サービス給付にかかる国庫負担抑制ツールであることは明らかです。今後も、国は要介護度を根拠とした制度改変を進めることが予想されます。

 また地域支援事業の体系が大きく見直され、市町村による医療・介護連携事業の実施が2018年度から義務化されます。これにより、京都市も地域の医療者と共同して、在宅療養を支える政策を担うことになります。

 こうした改革は「地域包括ケアシステム構築」の名の下に進められます。

 しかし、国の改革路線に沿って進むならば、切実なニーズが「自助・互助」に最終的に委ねられることになってしまいます。

 在宅でも施設でも、豊かな、その人の望む高齢期を保障するために、自治体の姿勢が問われています。

 ついては、下記の諸点を要望します。

(1)新たに医療・介護政策主体となるにあたり、京都市として公的な医療・介護保障のグランドビジョンを策定し、市役所に担当課を設置すること

(2)「新しい総合事業」の実施にあたっては、すべての対象者について「現行の訪問・通所介護相当」のサービスを提供すること

(3)地域における医療・介護連携事業の推進にあたり、保健センターの機能を抜本的に強化し、地域を対象とした保健師活動を再生すること

(4)地域包括支援センターの人的・財政的保障を強化すること。同時に公的な基幹型支援センターを設置し、地域包括支援センターの運営を底支えすること

(5)現在、国が検討している介護保険サービス利用料の2割化やさらなる保険給付縮小策に反対するとともに、万一実施された場合は、地方自治体としての救済策を福祉制度として実施すること

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