診療報酬の改定率談話
保険医の医療技術への適切な評価を2016年度改定に望む
診療報酬の2016年度改定率について、2015年12月21日、塩崎恭久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣が合意した。
安倍政権は、社会保障費の伸びを今後3年間で1・5兆円に抑える方針を打ち出し、診療報酬のマイナス改定を迫った。「病院の赤字拡大、診療所の利益安定」という開業医に対する誤った喧伝がされる中、当協会は本体の改定率をマイナスにしないことを掲げて署名運動に取り組み、会員から寄せられた署名を厚生労働省に持参して、厚生労働大臣宛に提出し、同時に直接担当者に訴えかける等の活動を行った。また、総理大臣、財務大臣、中医協会長および委員、京都選出国会議員にも送付して要請した。
その結果、改定率は本体プラス0・49%、薬価・材料価格マイナス1・33%、ネットでマイナス0・84%と発表された。本体においてわずかであってもプラスとなったのは、会員署名をはじめとする私たちの運動の成果である。ただし「外枠」に位置付けられた「制度改革事項」を含めて計算すればマイナス1・43%となる。社会保障費抑制の大部分が医療に押しつけられ、総体として引き下げになったことは看過できないことである。
そのため、二つの問題を指摘したい。
第一に、薬価・材料価格の引き下げ分の全てが本体改定に充当されなかったことだ。
「2016年度予算の編成等に関する建議」に書かれているが、財務省は「薬価改定は診療報酬本体の財源とはなり得ない」との考えであり、これは前回改定から引き続いている。その意味では、非常に厳しい改定率だと言わざるを得ない。特に院内処方を続ける開業医にとって、管理・損耗の費用を捻出するために行う地道な価格交渉をはじめ、診療側の経営努力により実勢価格が抑制されていることを無視した評価は許せない。薬価・材料価格の改定により生じた財源は、全て本体改定に投入すべきであった。
第二に、「外枠」に位置付けられた「制度改革事項」である。国費でマイナス609億円の削減が見込まれているが、外枠と言い難い項目が含まれている。医科で影響があるのは「湿布薬の1処方当たりの枚数制限」であろう。国費でマイナス25億円が見込まれている。湿布薬の給付制限は、「スイッチOTCが認められた医療用医薬品を含む市販類似薬」「漢方薬」と合わせ、以前から給付制限が目論まれていたものであり、その一角が切り崩された。また、「治療を目的としないうがい薬の投与」の保険外しと同様、医師の独占業務である処方権に関わる制限である。この「外枠改定」による引き下げを許し続ければ、いずれは「市販類似薬」「漢方薬」、更には感冒、上気道炎などの「軽医療」と称される疾病が給付制限のターゲットとされ、際限なく広げられる危険性がある。
個別の改定項目に対する評価は「現時点の骨子」や「中医協答申」を待ちたいが、地域医療を守る現場の保険医の医療技術を適切に評価することを強く望む。12月25日の中医協に診療側委員が提出した意見にある通り、「ものから人へ」評価を転換すべきである。
また、2017年4月に消費税率を10%に引き上げることが予定されている。我々はこの引き上げに反対しているが、引き上げる場合であっても、医療におけるゼロ税率を導入して、医療機関における消費税負担の問題を根本的に解決すべきである。
2016年1月12日
京都府保険医協会
理事長 垣田さち子