2026バイバイ原発きょうとプレ企画を1月24日に龍谷大学深草キャンパスで開催した。「脱原発の社会へ」と題し、龍谷大学政策学部教授の大島堅一氏が講演。参加者は75人。バイバイ原発きょうと実行委員会、京都府保険医協会、京都府歯科保険医協会の共催。以下、講演要旨を掲載する。
最高裁判決が原子力政策を転換
2011年の福島原発事故後、日本の原子力政策は民主党政権下で原発ゼロ社会を目指す方向へ転換した。しかし安倍政権になり、原発ゼロを決めた会議体を解体、原発依存度を可能な限り引き下げる方針へと後退した。さらに岸田政権ではGX実行会議が発足し、2022年7月に原発新設・最大限活用を認める政策へと大きく舵が切られた。2023年5月にはGX推進法、GX脱炭素電源法(いわゆる原発推進のための法律)が成立した。その後誕生した石破政権でこれらの法律を具体化した第7次エネルギー基本計画が閣議決定された。高市政権もこの基本計画を踏襲すると考えられる。
ではなぜ福島原発事故後に形成された政策がここまで大きく反転したか。背景として極めて重要なのが、2022年6月17日の福島原発事故に関する訴訟の最高裁判決である。判決は国の責任を認めない判断を示した。しかし、この判決は高等裁判所までに積み上げられた証拠に十分依拠せず、防潮堤や水密構造といった新たな論点を持ち出した点で異例であった。最高裁裁判長が判決と同年の8月に、東京電力の代理人を務める弁護士が所属する法律事務所の顧問に就任している事実を踏まえれば、判決の公正性に重大な疑念が生じる。最高裁判決がエネルギー政策の反転を後押しした点において、福島原発事故に対する国の責任の有無は決定的に重要である。これほど甚大な事故でありながら国に責任がないとされるのであれば、今後、国が原子力政策において責任を負うことは事実上なくなるだろう。
原発下降、再エネ急増の実態
第7次エネルギー基本計画は福島原発事故を発生させた国の責任の言及はなく、原子力の最大限活用を明記、原発依存度のできる限りの低減と再エネの最優先の原則を削除、原発に対する新たな支援策を詳細に明記している。また、2040年度目標は第6次エネルギー計画とほぼ同じで、原発2割、再エネ4〜5割、火力3〜4割を掲げている。
そもそも原発で2割の電力が得られるのか。現状、日本の電源構成は再エネが23%に対し、原発は9%である(2023年度)。原子力は主要電源でもベースロード電源でもない。一方で再エネは問題だらけと思われがちであるが、今最も増えているのが再エネである。日本と同じ島国のイギリスは再エネ8割を目指している。日本ができない理由はない。このままでは気候変動対策も危うくなる。
衰退産業の原発事業に国が支援強化
資源エネルギー庁の「原子力に関する動向と課題・論点」(2024年10月16日)の資料では、原発を「将来の事業見通しが立たない状況」と断言し、実際に川崎重工業などの大手企業が原子力事業から撤退している。国は原子力の最大限活用と言っているが、原子力事業は放っておけば衰退の一途故に必死になって支援を強化しているのが実態だ。だからこそ絶対に原発を再稼働してはいけない。
2021年に脱炭素電源オークション(脱炭素電源への新規投資を促進するべく、脱炭素電源への新規投資を対象とした入札制度)が開始された。しかし脱炭素と言いながら、入札の実態は2023年度で火力67%、原子力14%、再エネはゼロ、2024年度は火力22%、原子力49%、再エネはゼロで、実質的に原子力と火力への補助になっている。支援の原資は消費者の電気料金として徴収されている。
福島原発事故の広大な汚染と放射性廃棄物の問題も無視できない。放射性廃棄物の内、L1(低レベル放射性廃棄物で地下50mに埋める必要がある)約28万トンは原発1400基分を廃炉にする場合の量である。一度原発事故が起きると大変な負担と労力がかかる。原発事故はめったに起きないから問題ないという意見があるが、この数値を見ると全く経済性がない。今後、仮に原発を1基、2基作ったとしても、かつてのような50基体制は築けず、安定的な電力供給になり得ない。原発は気候変動対策にもほとんど役に立たず、再エネ普及を妨げるだけだ。
世界では再エネが急増している。2024年の1年間で世界の再エネ導入量は582GWである(1GWで原発1基分)。理由は早くて安価であるからだ。世界は省エネ・再エネ中心の新しいエネルギーシステムへの移行が進んでいるが、日本は今、逆方向に走っている。







