主張 サイバーセキュリティ対策は患者との信頼関係構築の根幹  PDF

医療機関を標的としたランサムウェア攻撃は単なる情報漏えいの範疇にとどまらず、患者の命に直結する医療安全上の重大な脅威である。一度攻撃を受ければ、復旧に数カ月を要することも珍しくない。その間の外来の受付停止や手術延期は莫大な復旧費用だけでなく、地域医療の崩壊という取り返しのつかない事態を招きかねない。
 23年の医療法改正により「サイバーセキュリティ対策」が義務化された。しかし、協会が行ったアンケートでは多くの会員医療機関がサイバー攻撃に不安を抱えつつも、対策が停滞している実態が浮き彫りとなった。特に診療所は「日々の診療の忙しさ」に加え、「専門人材の不足」や「多額の費用負担」が壁となり、対策を講じたくてもなかなか手が回らないのが偽らざる本音ではないかと拝察する。
 国も支援策を打ち出してはいるが、初期設定の複雑さや、月々の維持費が補助対象外であるなど、現場と乖離している面も否めない。
 こうした中、松本デジタル相(当時)が2026年に注力すべき政策として医療サイバーセキュリティを筆頭に挙げ、国の積極的関与を表明したことは大きな一歩である。「各機関の自主努力」頼みから脱却し、現場に寄り添った実効性のあるサポート体制が構築されることを強く期待したい。
 サイバーセキュリティ対策は単なるシステム保守だけの問題ではなく、患者の命と権利、医療者との信頼関係を守るための医療の根幹を支えるものである。
 万が一の事態に備えたBCP(事業継続計画)の策定も急務である。システムが停止した状況下でも、紙カルテへの切り替えや代替手段による診療継続を可能にする体制を整えておくことは有事の混乱を最小限に抑え、地域医療を守っていくために必要不可欠な対策である。協会としても、引き続き会員各位が安心して医療に専念できるよう、有益な情報提供に努めたい。

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