「今日マイナ保険証を使って受診していますね。最近の薬は分かりませんが、3カ月くらい前のだったらオンラインで分かりますよ。カードリーダーに置いた時、同意しましたよね」
「何か分からんけれど、はい、を押しただけです。何の同意ですか」
そして診察室で説明をする。同意の内容を理解していなくても、「同意した」ことになっている。
薬剤情報を電子カルテと連携し、瞬時に併用禁忌薬でないかを判断できるのは、安全な医療に有益であり、さらに薬剤の重複を防ぎ、適切な投薬を行うことで医療費の削減にもつながる。一方で、過去の薬剤情報や他の医療機関の受診歴が全て見られることや、高額療養費制度の区分により医療機関に大体の年収が知られることに憂慮し、マイナ保険証をやめる患者もある。
改正医療法には「電子カルテ情報共有サービス」の制度化、「全国医療情報プラットフォーム」に集積したデータの利活用推進が盛り込まれた。安心・安全な医療のための情報共有や活用、新薬開発などへの患者データ活用は否定すべきではないが、人権としての「自己情報コントロール権」を保障する法整備が必要である。
政府はサイバー攻撃に先手を打って被害を防ぐ「能動的サイバー防御」の導入を巡り、攻撃元サーバーに入り込み無害化する措置を10月1日から可能とする方針を発表した。医療情報が対象となるのかは分からないが、憲法が保障する「通信の秘密」を一部制約するため、プライバシー侵害や目的外使用について注意が必要である。
協会と地区医師会との懇談会の開催に併せて実施したアンケートにおいても、実情を無視した医療DXの推進を進めてほしくないと考えている会員は多い。全ての国民が医療DXの有用性を理解し、個人情報の使用に際しても納得して同意できるまで、医療機関に説明を委ねるのでなく国が説明を続けてほしい。そして政治は多数決によるだけではなく、現場の声に耳を傾けて誰一人取り残さないように議論を尽くし、医療DXを良い制度にしてもらいたい。
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