「蔑ろ」を辞典で調べると「侮り軽んずること」「ないもののように扱われる」意味とある。最近推し進められている医療政策を考える時、よくこのワードが浮かぶ。なぜなら我々の医療現場から見ていると、全く現状に合致していない政策ばかりが提案されるからである。まさに実際の医療現場の意見を蔑ろにされているからだと想像する。
病床数削減といっても個々の地域の実情に合わせないと、地域の診療所からの入院の受け入れができなくなり地域医療は崩壊するであろうし、そんな地域の病院に医師が勤務したり、診療所を開業しようとは思わない。OTC類似薬は慢性疾患(小児も含め)では処方することが多く、保険適用を外したら社会保険料は下がって手取りの給与は上がっても、それ以上に高額の市販薬の代金を支払うことになり、結局可処分所得は減りかねない。結果的に健康状態によっても所得格差を生み、新たな社会問題となる可能性がある。
依然として医科での薬品供給は不安定で、不足を補うために類似薬を購入し、結果的にデッドストックとなり、ただでさえ診療報酬の実質マイナス改定が続く中で経費が余計にかかっている。一方、地方都市では医師不足がいまだ解消されず、医大の入学定員に地域枠を設けて医師不足の地域へ医師を派遣しようとしているが、地域枠の医師が実践的に働けるようになるにはまだ時間がかかるのではないか。そもそも自治医科大学の存在意義はどうなっているのか疑問に感じる。最近の話題を見ても、医療現場の実情を無視しているかのような政策が目立つ。
我々には医師法で定められた応召義務があり、社会通念上もストライキなどの強い抗議行動をすることはできない。したがって我々の意見を蔑ろにされないように各地域の医師団体である保険医協会や各地区医師会を通じて、医師団体として意見をまとめて政府と交渉していくことが大事になる。
近年、皆保険制度の維持のためという免罪符を盾にした財務省主導の医療制度改革はどれも我々の意見が蔑ろにされているかのようなものが多い。憤りを感じながらも与えられた診療報酬の中で無理やり日々の診療を続けている。しかしそれもそろそろ限界に達してきた。地方都市では赤字がかさんで病院は統廃合や老健施設へ転換し、診療所は閉院となり地方都市の医療資源が減少し、人口減少に拍車がかかる。この状況を放置すれば地方都市が崩壊し治安も悪くなり、地方都市が蔑ろにならないかと憂う毎日である。
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