かんぽう趣談 五 田中 寛之(舞鶴)  PDF

ヒバリとフクロウ

 起立性調節障害という疾患がある。ご存じの方が多いと思われるが、一応概略を述べておくと
 (1)朝なかなか起きられない
 (2)午前中を中心に頭痛や腹痛がする
 (3)思春期に多い
 (4)自律神経の調節機能の乱れによるとされている
 という特徴がある。有病率は高く、中学生の1割程度に見られる。
 軽症例ではただ「朝が弱い」で済むのかもしれないが、中等症以上では欠席や不登校の原因となるので、医療や学校教育の分野で大きな問題になっている。
 治療は生活指導、薬物療法、環境調整、心理療法がある。
 と、書いてはみたものの、これが意外と難しいのだ。皆さんも共感していただけると思う。
 病因として体質、生活習慣、精神的要素などが複雑に絡み合っており、治療にしても「薬を出してハイ終わり」とはいかないことが多い。ある意味、難病である。
 昔はどうだったのだろう。50年ほど前、自分の子どもの頃を思い返してみても、起立性調節障害などという病気で休んでいた同級生は記憶にない。しかし新しい病気というわけでもなさそうだ。

 昭和の時代に山本巌という医師がいた。西洋医学と漢方医学をうまく組み合わせた名医であったという。その山本先生はこう言っている。
 人間には大きく分けてヒバリ型とフクロウ型がいる。ヒバリ型は朝から元気で活力もあり、中年までは病気知らずである。しかし中年以降に急に大病を患ったりする。一方フクロウ型は午前中には調子が出ず、体力もあまりない。しかし案外と長命を保ったりする。
 このフクロウ型のめまいや倦怠感に効くと述べられているのが苓桂朮甘湯である。確かに比較的よく効くし、漢方薬にしては味やにおいも悪くないので、処方しやすい。
 自分の拙いやり方をさらすのは少々お恥ずかしいが、私は起立性調節障害の治療には苓桂朮甘湯とミドドリンを併用している。夜遅い時間にスマホを触らないようにとアドバイスもする。あとは「そのうち治るから、あまり焦らないように。無理しないようにね」と付け加える(すぐに治らないことへの予防線を張っているだけかもだが…)。
 しかし、それでも調子が良くならないことも多々ある。多々ありすぎて困っている。何か良いやり方があればぜひ教えていただきたい。

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