税制、何が変わる?後編 年収の壁が変わりました 税理士 竹内 紘太朗  PDF

2025度税制改正では物価上昇局面における税負担の調整や就業調整対策の観点から、いわゆる「年収の壁」が見直されました。ここでは給与収入のみの労働者を前提として、年収の壁が現在どのようになっているのかを見ていきます。
・そもそも「年収の壁」とは?
 労働者の年収が特定の金額を超えると税や社会保険料の負担が生じたり、扶養者での控除が受けられなくなる。その負担が発生する境目となる年収金額が「年収の壁」と呼ばれている。
・労働者本人に住民税負担が発生するライン
 給与年収が110万円を超えると、本人に住民税が発生(自治体によって若干の違いあり)。ラインを超えた分に対する課税となるため、手取りの逆転現象はなし。
・労働者本人に所得税負担が発生するライン
 給与年収が160万円を超えると、本人に所得税が発生。ラインを超えた分に対する課税となるため、手取りの逆転現象はなし。
・労働者(配偶者)が税法上の扶養範囲内で働きたい場合のライン
 被扶養者の給与年収が160万円を超えると、扶養してくれている配偶者において、満額の控除を受けられなくなる。160万円を超えると控除額は逓減していき、201・6万円以上になると控除額は0になる。
・労働者(配偶者以外)が税法上の扶養範囲内で働きたい場合のライン
 被扶養者が19歳〜22歳の場合とそれ以外の場合で年収の壁が異なる。
【19歳〜22歳の場合】
 給与年収150万円を超えると、親などの扶養者において、満額の控除を受けられなくなる。150万円を超えた場合には控除額が逓減していき、188万円を超えると控除額は0になる。
【それ以外の場合】
 給与年収123万円を超えると、親などの扶養者において、控除を受けられなくなる。1円でも超えると扶養者での控除額が0になってしまうため、世帯全体での手取りの逆転現象が起こり得る。
・税金以外にも存在する「年収の壁」
【社会保険における壁(世帯全体での手取りの逆転可能性あり)】
 大前提として、本人に社会保険の加入義務がないことが被扶養者の条件。年収130万円未満がラインになるが、金額の判定方法は税法と異なるため、扶養者の勤務先にルールを確認する必要あり。
 また、25年10月より、19歳〜22歳の被扶養者の収入要件が150万円未満へと拡大。
【企業独自の手当における壁(世帯全体での手取りの逆転可能性あり)】
 「家族手当」など独自の手当を設けている企業があり、扶養者の勤務先にルールを確認する必要あり。
 クリニックには年収の壁の範囲内で働かれているスタッフもおられると思います。今回の改正で年収の壁がさらに複雑化しており、どのラインを超えるとどんな影響があるのかを把握するのが一段と重要になります。

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