月経の不調 漢方薬でQOL向上 産婦人科診療内容向上会  PDF

産婦人科診療内容向上会を8月2日にホテルオークラ京都で開催した。京都産婦人科医会とクラシエ薬品鰍ニの共催、参加者は会場30人、ウェブ62人。京都産婦人科医会理事で支払基金京都審査委員会審査委員の井上卓也氏が「医療保険審査の仕組みと最新の審査事情について」を解説。福島県立医科大学ふくしま子ども・女性医療支援センター特任教授の小川真里子氏が「女性の月経に関連する心身の不調―漢方を通じて支える」について講演した。

レポート
小芝 明美
地方独立行政法人京都市立病院機構
京都市立病院

 会の冒頭では長年にわたり京都産婦人科医会理事、京都府保険医協会理事を務められ、5月にご逝去された種田征四郎先生への黙祷を参加者全員で捧げた。京都産婦人科医会の柏木智博会長より開会のあいさつで、分娩の保険診療化についての情勢では分娩の無償化という方針に転換してきているようだとのお話があった。続いて京都府保険医協会の内田亮彦理事長から、分娩費用の保険化の懸念点について保険医協会としても共有している旨のあいさつがあった。
 次に、井上氏より「医療保険審査の仕組みと最新の審査事情について」と題して解説があり、レセプト作成における留意事項について、あらためて大変学びになる内容であった。
 特別講演では小川氏より「女性の月経に関連する心身の不調」について講演いただいた。2004年の経済産業省による試算では月経随伴症状による経済損失は約6000億円/年と報告されており、女性が月経随伴症状に対する治療を希望した際は、ホルモン療法と合わせて、漢方療法を用いての治療も選択肢となり、漢方薬の活用方法について解説いただいた。月経前症候群(premenstrual syndrome:PMS)は月経周期の黄体期後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するものと定義され、女性の約30%程度に見られるとされており、代表的な女性心身症である。
 心身症に対する医療は全人的医療と言われ、疾病を生物学的要因だけではなく心理・社会的要因を絡めて全人的に理解して病の予防・診断・治療に活かす医療をベースにした包括的医療のことを指す。漢方医学は全人的医療という考え方に基づき発展してきた医療であり、心身症へのアプローチ法として親和性が高く、当帰芍薬散、加味逍遙散、桂枝茯苓丸のいわゆる女性に対する3大処方に加え、抑肝散加陳皮半夏や加味帰脾湯などの処方などを使い、使用できる漢方薬の種類を少しずつ増やすことで、女性のQOL向上に貢献できるとのお話であった。明日からの診療に直結する内容であり大変有意義な講演会であった。
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【今後の予定】
形成外科診療内容向上会
日時=2026年2月28日(土)予定
場所=京都府保険医協会・会議室
講師=愛知医科大学形成外科教授 古川 洋志氏
共催=京都形成外科医会、京都府保険医協会

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