戦後人口ボーナス期のものに部分最適化を繰り返した医療制度には多くの問題がある。近く予定の医療法改定では地域医療構想を軸に各種制度の新設が見込まれる。
人口ボーナス期には高齢者ゼロ負担まで実現され、いまだに後期高齢者は自己負担が低い。個人のセーフティネットを公的には雇用者、私的には家庭に任せた日本のシステムでは解雇も離婚も困難であり、バブル崩壊後の長い低迷は不要分野の労働力解雇や新規分野の開拓と新規雇用ができなかった日本社会の非柔軟性による。派遣労働が制度化され、就労者を海外に頼る現状でも、有権者ウケの悪い解雇規制の緩和は行われまい。
変化への対応力が低いまま稼ぎ手が減少した近年、労働力再生産には直接つながらない高齢者の年金保険等生活保障料は増大し、勤労者世帯の年金保険料などの社会保障関連の負担はすさまじい。ケア労働需要ばかりが増加する。
会計収支の悪化に対し収入増加を図るべきであるが、金利上昇を見込めば国債発行はもう増やせない。現状でも高額な法人税を増額しても優良納税企業は他国に移動するだろうし、内部留保は埋蔵金ではない。そもそも保険は「いざという時のため」にあり、高齢化対策としては筋が通らず賄いきれないから、高齢化関係分は保険料から消費税に振り替えるのが理に適うが、人気取り政策として消費税率を下げることすら議論されている。
では支出は減らせるか。財務省・厚労省の定石として一方的に余剰とみなす支出を減らすようシステム化するほどに、有効な財政規模は小さくなり、そのうち動けなくなるだろう。公的病院の半分以上が赤字なのである。
生産性の向上が何よりも重要であり、分野内でもシステムの効率化が必要である。保険医療制度の部分最適化のため、加算や施設基準などさまざまな規制が累積されてきた。進行中のDXは行政が設備費も含めて雑務を現場に放り出すものである。地域医療構想も医療法改定も、届け出や手続きを減らす流れは見えない。それらはすべてコストである。
手足のおもりを増やせば働きは悪くなり生産性は落ちる。年金支払も社会保障支出もどうにもならない現在、生産性向上のためには、身近には保険医療、保険点数制度において、本体価格を保険収入のメインとし、加算や施設基準をなるべくなくし、届け出などは必要であってもDXでの情報の単回の登録もしくは自動登録で済ませてしまい、本来の医業に医療機関が専念できる状況を求めたい。
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