医会寸評  PDF

そよ吹く風が涼しく感じられる今日この頃。コンサートホールで音楽に耳を傾けるもよし、美術館を訪れるもよし。芸術の秋がやってきた▼美術館で鑑賞後、立ち寄るのは併設された喫茶室。ここの良しあしは、その日の美術鑑賞の価値を大きく左右する。乙訓にあるアサヒグループ大山崎山荘美術館には山の中にオープンテラス喫茶室が併設されている。嵯峨の福田美術館併設のカフェからは渡月橋から嵐山までが一望できる。左京の京都国立近代美術館には疎水を臨むオープンカフェが。さらに嵯峨嵐山文華館のカフェからは大堰川が見渡せる。大切なのは、これらのカフェでいただくメニューには食材の味に加え、美のエッセンスが付加価値として添えられていることである▼近年、医療現場では、特に小泉構造改革以降、効率を重視するあまり人間的な温かさや美しさが置き去りにされがちである。しかし本来、医療は人の心と体に寄り添うもの。今後かかりつけ医制度や医師の偏在といった課題が議論されるであろうが、どのような制度であれ人間性が尊重されなければならない▼医療にも美を。ここで言う美とは人間性の美しさのこと。わが国では失われた30年間、あらゆる分野で付加価値を与える努力が疎かにされてきた。これからは医療にも付加価値としての美が求められる。(clear)

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