長年の社会保障費の抑制政策に加え、昨今の急激な物価高騰・人件費増加、人材確保困難等により、医療機関は深刻な経営危機に直面している。すでに医療機関の閉院や倒産が相次ぎ、地域医療の崩壊が現実のものとなりつつある。少なくとも経費増加に見合う診療報酬の大幅な引き上げと抜本的な改善が早急に求められている。
一方、現役世代の保険料負担軽減等を理由に、受診抑制効果を前提とした高額療養費の上限引き上げや医療用医薬品が不足する中、OTC類似薬の保険適用除外が議論されてきた。厚生労働省の試算では保険適用除外により患者負担が従来の約10倍に増えるケースもあり、経済的理由で必要な医療を受けられない国民の増加が懸念される。
2月には「医療法等の一部改正案」が国会に提出され、「新たな地域医療構想」や「医師偏在対策」等が提案された。患者の医療アクセス制限や自由開業規制につながることが危惧される。さらに、同改正案に盛り込まれた「医療DXの推進」については、患者の同意を不要とした民間企業による営利目的の医療情報の利活用等、オンライン診療受診施設の新設とともに医療の市場化・産業化の意図が垣間見える。単なる医療費抑制を目的にこれらの政策が進められることは断じて容認できない。
我々は「保険で良い医療と医業の両立」という理念に基づき、すべての国民が安心して医療を受けられる社会保障制度の実現を強く求め、以下を決議する。
一、医療崩壊を回避するための期中改定を速やかに行い、次期診療報酬改定においては、医師の技術および経費が適切に評価された基本診療料の大幅引き上げを行うこと
一、高額療養費上限引き上げやOTC類似薬の保険適用除外等、さらなる保険給付の縮小を行わず国民皆保険制度を堅持すること
一、「新たな地域医療構想」および「医師偏在対策」を通じて医療機関や地域の実情を無視した医療提供体制の管理を行わないこと
一、医療DXにおける患者情報の利活用は、医学研究、学会活動、創薬、治験等に限定し患者の自己情報コントロール権を保障する法整備を行うこと
一、オンライン診療受診施設の新設に見られる医療の市場化・営利化政策を撤回し、患者と医療の安全が守られるオンライン診療となるよう適切な規制を行うこと
一、医療用医薬品の生産体制を安全保障の一環として確保し、国の責任で安定供給を図ること
2025年7月27日
京都府保険医協会
第78回定期総会
(第209回定時代議員会合併)