主張 患者の自己負担とリスク危惧  PDF

マイナ保険証の利用率は昨年12月に新規保険証発行の廃止以降、国民全体でも約3割と低迷している状況で、医療機関の約9割がトラブルを経験し、その78%が従来の保険証でトラブル対応している(保団連調査)。厚労省は後期高齢者全員に資格確認書を交付する方針を決定したが、従来の保険証を発行すれば済む話で無駄な費用も節約できる。報道によると資格確認書の再発行に1万円というとんでもない保険者があるとのことである。
 昨年の診療報酬改定で、医科・歯科医療機関、薬局や介護事業所は著しく経営が逼迫し、閉院や倒産が相次いでいる。本来の診療に関係のないベースアップ評価料や医療DX推進体制加算が付けられたが、諸物価・光熱費の高騰への対応は困難な状態である。医療DXに対応するための費用への補助金も、かかった費用の4分の3や2分の1程度で、ランニングコストを含めて医療機関の負担は大きい。診療報酬の大幅な引き上げが必要である。
 自民党、公明党、日本維新の会の3党協議で、日本維新の会の猪瀬直樹参院議員はOTC類似薬を保険給付から除外する薬剤名として28有効成分を示した。薬剤費が多い上位三つはヘパリン類似物質、酸化マグネシウム、フェキソフェナジンなど日常診療で広く処方されている薬剤で、患者への影響は甚大である。日本維新の会はOTC類似薬の保険給付外しで最大1兆円の医療費削減を目指している。
 28有効成分の薬剤を保険給付から外した場合、患者は治療に必要な薬剤を市販薬として購入せざるを得なくなる。市販薬は医療用医薬品の薬価を大きく上回る傾向で、患者の負担増、受診抑制、自己判断での市販薬の服薬による重症化などが懸念される。大阪府保険医協会が実施したOTC類似薬の保険給付外しの調査を5月14日に読売テレビ、5月17日に関西テレビが報道した(詳報は全国保険医新聞第3005号)。協会は今後も「保険で良い医療と医業」を目指していく所存である。

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