医療者は苦しい 国動かし成果に 議員団と懇談  PDF

共産 現場の声が政治を変える
立憲 命守る方向に転換したい

 協会は医療政策をめぐる課題について、各政党との懇談を行っている。今回は5月24日に日本共産党京都府委員会、25日に立憲民主党京都府総支部連合会と懇談した。地域医療構想の見直し等を盛り込んだ医療法等の一部を改正する法律案が今国会に提出され、医療費抑制政策が進められている。協会は物価高騰に苦しむ医療機関を追い詰める医療費抑制政策は国民の医療保障の後退につながる危機を招くとして、国の政策転換の必要性を強調した。各政党からは医療を含めた地域の課題をいかに政策につなげられるかが肝要と述べられ、協会の情勢認識を共有した。

高齢者が地域に
住み続けられない

 「24年度診療報酬改定で医療現場が崩壊し始めている。現場の声が政治を変えると信じ、党としてパイプ役となり政治を動かしていきたい」。日本共産党議員からはこの日、自民・公明・維新の3党協議がOTC類似薬の保険適用外しを断念し、病床削減に大筋合意したとの速報を受け、府内の病床削減による医療の問題認識が示された。協会はコロナ禍を経て府内の必要病床を議論して新興感染症に備えるべきところ、経営が苦しい病院が生き残りをかけて病床削減を先行しているのが実態と指摘。さらに、協会の医療法人事業報告書の調査を紹介し、個人立の診療所の事業規模は医療法人の半分程度で利益率も低いのが現場感覚と強調した。議員からは財務省のデータへの正当な評価がなされるべきとの意見が上がった。
 議員からは丹後や舞鶴、京北地域の状況が紹介され、医療やコミュニティが地域からなくなると高齢者が住み続けられなくなり地域が維持できないと問題提起があった。協会は地区医師会との懇談会でも地域の課題が挙げられているとして、国には地域が切り捨てられない政策を求めたいと応じた。
 今国会で物価高対策として消費税減税が議論されていることを受け、議員からは「自民党内からも減税の声が上がり、国会での議論に変化を感じる」との意見が出された。協会は17年に発表した「社会保障の充実とそれを支える財政と財源のあり方」を紹介。所得税を給付付き税額控除へ変更、社会貢献税・金融取引税の導入等による財源提案を示し、社会保障の充実は可能で財源論を含めた議論が必要と訴えた。そのためにも国政では政党が共同しなければ政治は変わらないとし、党には相手頼みではなく自ら政策の一致点を見出し働きかけてほしいと強調した。

命軽んじられる
風潮に懸念

 「医療費抑制ではなく、何を守っていくかを協会とともに考えたい」。立憲民主党議員からは今国会で議論されているOTC類似薬の保険適用外しについて協会の見解を求められた。協会は保険適用外しは国民医療費の4兆円削減のために打ち出されたが、受診抑制による健康被害等、患者にとっては負の側面があると指摘。「保険が効く医療」と「保険が効かない医療」を共存させる混合診療は命の格差につながり、国民皆保険制度の根幹を崩すことになると強調した。
 議員からは今の社会には“長生きするな”“命を守ることが軽んじられている”という風潮があるのではとの疑問が呈され、患者にも優しい医療制度であるべきとの意見が出された。老朽化している府立看護学校、医師不足、医師以外の職種の人材確保、人口減少などの地域の課題も挙げられ、医療費抑制政策ではこれらは解決しないとの認識が示された。また、地域の課題を政策につなげていくことが肝要とした。コロナ禍の経験を今後の政策に活かすことが重要との問題認識も示された。
 協会は現政権が進める医療費抑制政策では物価や人件費高騰で厳しい経営を強いられている医療機関をさらに追い詰めると指摘。特に病院では物価高騰に伴う消費税負担などの経費の増加が著しいとして、日本病院会等の病院6団体が実施した24年度診療報酬改定後の病院の経営状況の緊急調査を紹介した。その上で“つぶクリ”(潰れそうなクリニック)と言われるような零細診療所の経営も守られる医療政策が必要で、地域の医療課題が改善されるよう運動していきたいと応じた。今後も地域の課題を共有し政策転換の実現に向け、懇談の実施を継続していくことを確認した。

●5月24日の出席者
日本共産党から倉林明子氏(参議院議員)、島田敬子氏(京都府議会議員)、光永敦彦氏(京都府議会議員)、玉本なるみ氏(京都市会議員)、山田耕司氏(京都市会議員)、秘書1人。協会からは、鈴木理事長、内田副理事長、吉中理事、増田監事(肩書はいずれも当時)、事務局4人。

●5月25日の出席者
立憲民主党から福山哲郎氏(参議院議員)、山本和嘉子氏(元衆議院議員)、田中美貴子氏(京都府議会議員)、福田佐世子氏(八幡市議会議員)、田中健志氏(京都府議会議員)、増田大輔氏(京都府議会議員)、平田圭氏(京都市会議員)、福井平和氏(木津川市議会議員)、秘書1人。協会からは鈴木理事長、内田副理事長、吉中理事、吉村理事、増田監事(肩書はいずれも当時)、事務局4人。

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