専門医会長との懇談会 物価上昇に見合う診療報酬増を 医薬品不足も深刻  PDF

協会は専門医会長との懇談会を3月15日に開催。専門医会から11人、協会から8人が出席した。協会から役員と保険審査通信検討委員の改選、2024年審査に関するアンケート調査結果、26年度改定に対する保団連要求(第1次案)について説明。各専門医会に次期改定への要求、現在の点数の不合理部分、協会活動への要望などについて意見を聞いた。

内 科
 次期改定要望は保団連要求で網羅されていると考える。ベースアップ評価料は手続きが簡潔になって届出も増えているので恒常的にして、さらに点数を引き上げる取り組みが必要だ。基本診療料は内科では技術料を算定するところがないため、見合った額への引き上げ、物価上昇に見合った引き上げを恒常的に行うよう要望したい。
胸 部
 抗がん剤が非常に高額で毎月数百万円に達する。遺伝子検査も何十万円を要する。主に外国から持ち込まれている技術や薬剤が非常に高額で医療費高騰を招いていると、特に肺がんを多く診る呼吸器で感じている。一部薬価が高くなった結果、メーカーが安い薬剤を作れなくなり基本的な薬剤が不足している。診療報酬は大事だが、負担の在り方や高薬価問題の背景を国民に知ってほしい。

小児科
 保団連要求の小児科外来診療料の「在宅療養指導管理料を他の医療機関で算定している患者は出来高算定の対象外とすべき」旨には反対だ。この出来高算定規定ができたことによって、小児科の開業医が在宅医療に非常に関わりやすくなった。訪問診療料と在宅時医学総合管理料が算定できることになり敷居が低くなった。小児在宅をしている医療機関にとっては出来高対象から外してほしくない一方で、一般小児科医にとってはそうではないため難しいが、ぜひ残してほしい。

外 科
 コロナ禍が明けて補助金が終わり、済生会でも6〜7割が赤字に転落している。このままではつぶれる病院が出てくる。厚労省は病床数が減るのは止むなしと考えているのかもしれないが、このような危機を国民はあまり知らないのではないか。診療報酬によりどのように病院が維持できるかを考えてほしい。

産婦人科
 正常分娩の保険適用が目指されている。少子化対策の一つと言われるが、保険適用にその効果があるとは考えられない。厚労省の検討会でも、望んでいるのは保険化ではなく負担軽減だとの妊婦の意見もあったとのことである。分娩数は毎年5%強ずつ減っており、それだけ産婦人科の収入が減っている。これに保険化が加わると周産期医療の安全性の担保ができなくなる。正常分娩には純粋な医療行為以外のさまざまな要素がある。入院環境、患者希望の無痛分娩、産後の助産師のケアなども包含しており、これらをどう扱うかが見通せずに26年度の導入は見送られたと見ている。今後もいろいろと問題が出てくると思うので、協会としても問題意識を持っていてほしい。

耳鼻咽喉科
 認知症になる一番のリスクは難聴であり、認知症予防の視点から見て補聴器装用の有用性が言われている。協会からは中等度難聴に対する指導管理料創設を要望してもらっているが、成人の中等度難聴に対する補聴器購入費用に対する助成を京都府耳鼻咽喉科専門医会と日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会京都府地方部会として求めている。協会からも自治体等への働きかけをお願いしたい。

消化器
 物価高騰の中、診療報酬だけ上昇しないのはあり得ない話だ。医療機関の経営が逼迫する原因に持ち出しの問題がある。患者のために診療すればするほど赤字になる。消化器がんの病理診断で、免疫染色や特殊染色を3〜4項目することは日常的に行われている。しかし現状のルールでは1項目しか算定できず、1件当たり1万円を超える持ち出しとなっている。現状を把握しない保険診療上のルールは見直してほしい。

泌尿器科
 尿路性器感染症が非常に増えているが、薬価の低い薬剤、サワシリン、オーグメンチンなどが手に入らず非常に困っている。絶対に必要な薬剤は国が責任を持って確保してほしい。

糖尿病
 生活習慣病管理料については、現場の医師の意見が反映されず一方的に押し付けられ、画一的な療養計画書ではきちんと指導できないという意見がある。
 その他、個別項目について要望する。
 (1)HbA1cの適応病名を「耐糖能障害」や「耐糖能異常」に拡大。
 (2)間歇スキャン式持続血糖モニタリングの適応範囲を GLP-1 受容体作動薬と GLP-1+GIP 受容体作動薬使用者に拡大。
 (3)血糖自己測定器加算の「月90回以上測定」「月120回以上測定」についてインスリン自己注射中の2型糖尿病についても算定できるように拡大。
 (4)日本の健康保険に加入している外国人患者に対して外国語対応を要する場合の加算を新設。

透 析
 改定への要望については医会内で確認したい。役員・委員の推薦についても検討したい。

循環器
 生活習慣病管理料では署名を嫌がる患者もいる。そもそも署名をしてもらう意味があるのか。点数も特定疾患療養管理料に戻すべきだ。長期収載品の選定療養化には大反対。後発品が出た段階で先発品の薬価を引き下げて競争させるべきだ。大事な薬剤が手に入らない。国としてきちんと管理してほしい。診療報酬で算定できない医療材料が多い(循環器ではカテーテルで使うドレープ、ガウン、手袋、心カテで使用する器具、病棟で患者のケアに使う物品など)。物価上昇でこれらのコストも跳ね上がっているが、まったく診療報酬に反映されておらず問題だ。このままでは病院がつぶれてしまう。

 協会からは、「ご意見・ご要望は、保団連要求に含まれているものもあれば、項目の再検討が必要になるものもあり今後保団連と協議したい。材料代が持ち出しになることはあってはならず、国にはしっかり検討してもらう必要がある。評価方法は診療報酬で行うことが本筋であり、どのような要望が適当か議論していきたい。国・厚労省・中医協への要請にあたっては、国民への働きかけや納得を広げていくとともに各学会・医会の動きなどとも連動して取り組んでいきたい」と述べ終了した。

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