目に安全で効果的な眼瞼手術を 眼科医の視点から  PDF

形成外科診療内容向上会・京都形成外科医会学術集会

 形成外科診療内容向上会および第73回京都形成外科医会学術集会が3月8日に京都府保険医協会会議室で開催された。「眼瞼下垂手術の功罪〜形成外科医が知っておきたい手術のポイントと合併症対策〜」と題して、京都府立医科大学眼科学教室講師の渡辺彰英氏が講演した。参加者は26人。

レポート 津下 到(京都大学)

 日々の診療において困った症例の相談の場として、熱傷、乳房再建、褥瘡に関する4演題の症例提示と検討が行われた後、京都府立医科大学眼科の渡辺彰英氏から特別講演をいただきました。眼科医の視点から見た眼瞼下垂手術の注意点や合併症対策をお示しいただきました。
 眼瞼下垂手術の目的は良好な開瞼による視野の獲得、視機能の改善である一方、過剰な開瞼はドライアイや角膜上皮障害の原因となり、異物感・痛み・視機能低下を引き起こします。ポイントは、手術前後の瞬目やオキュラーサーフェス(眼表面)の評価にあり、眼表面の摩擦亢進や涙液貯留量の減少にも注目して、目標にするべき開瞼幅を患者ごとに検討していく必要があります。過剰な矯正にならないことが第一ですが、術後に高度のドライアイや角膜上皮障害を生じた場合は積極的に眼科医と相談し、眼表面の客観的な評価を依頼した上で、修正手術の要否を含めて検討が必要です。
 渡辺氏の実際の手術映像とともに、具体的なコツや工夫点を約1時間にわたりご教示いただきました。注意点や合併症対策については学術的なデータを基に解説いただき、より安全で効果的な手術手技を患者に提供するための、まさに診療内容向上会となりました。眼瞼下垂手術は過矯正に至っていなくとも、上輪部角結膜炎や結膜弛緩症といった球結膜の摩擦亢進に由来する異物感・流涙・疼痛があり得ることを詳述いただき、一般的な形成外科学会では得られにくい知識を深められる場となりました。
 眼瞼下垂手術は形成外科医、美容外科医によっても近年多く施行されている手術であり、会場からは多くの質問が挙がりました。森本尚樹会長(京都大学形成外科教授)からも「日常診療である眼瞼下垂手術に関する疑問点や注意点を整理する良い機会となった。眼科との連携が重要であることをあらためて認識できた」と言及されました。

講師の渡辺氏

ページの先頭へ