第208回 定時代議員会決議  PDF

ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争は、いまだ解決していない。日本原水爆被害者団体協議会にノーベル平和賞が授与されたことは、核兵器をめぐる情勢への警告となり、唯一の被爆国として、日本政府にも紛争解決への協力を期待する。岸田前政権は、2027年までの5年間で43兆円もの防衛費を確保すると決めた。財源は歳出改革や剰余金の活用、所得税や法人税の増税などで調達するとし、歳出改革として社会保障費の削減や医療・介護の新たな患者負担増を計画している。さらには、医療提供体制改革として、「新たな地域医療構想」と「かかりつけ医機能報告制度」が開始され、多方向からの開業規制・医療へのフリーアクセス妨害が模索されている。
 10月の衆議院選挙後に第二次石破政権が誕生した。国民に十分な説明をしないまま医療DXを推し進めようとした前政権とは異なり、議論を尽くして良い政策を実行するよう求める。安心・安全な医療のためにはデジタル化を否定するものではない。しかしながら、多くの医療機関がオンライン資格確認の環境整備をしたものの実務でのデータ不備も多く、維持費やサイバーセキュリティへの対応など新たな負担を感じている。
 2024年度診療報酬改定で新設された「外来・在宅ベースアップ評価料」は、診療報酬が療養の給付の対価であるという制度の根本に矛盾していないか疑問である。点数が継続されるか分からないことや複雑な算定条件などを理由に算定しない医療機関も多く、加えて給与を国に報告することに戸惑う声もある。2025年度の予算編成に向けて財務省の財政制度等審議会が、職種別の給与と人数の情報を求めていることから、この「評価料」新設の目的が、賃上げ政策のほかに医療機関の経営情報収集だったとも考えられる。
 10月より後発医薬品のある先発医薬品が選定療養の対象となった。後発医薬品への移行を促進させる目的であろうが、在庫不足が解消されていない後発品のために現場では右往左往しているのが現状である。さらに、長期収載品を使用する場合には、薬剤ごとに使用理由の記載が必要で、医療提供側にも多くの手間と時間を要している。
 我々はこうした事態の抜本的解決を求め、国民皆保険制度を堅持し安全でより良い医療体制の構築を目指して以下を決議する。
 一、物価高騰・賃上げに対応した基本診療料の引き上げを中心とした診療報酬改定を行うこと
 一、保険診療で認可したすべての医薬品の安定供給と品質管理を徹底し、長期収載先発医薬品に対する選定療養を撤回し、選定療養の拡大を行わないこと
 一、自由開業制を守り、フリーアクセスを妨害しないこと
 一、真に安心安全な医療に資する医療DXを推進し、特にサイバーセキュリティ対策は費用面も含めて国が主体的に実施すること
 一、世界的な軍拡、紛争が生じる中、唯一の戦争被爆国として核兵器のない平和な世界の実現を目指すこと

2025年1月30日
京都府保険医協会
第208回定時代議員会

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