COP29(第29回国連気候変動会議)と私たちの課題
昨年の夏と秋はことのほか暑かった。気象庁は2024年の秋(9〜11月)の平均気温は平年と比べて1・97℃高く、統計のある1898年以降で最も高かったと発表した。近畿地方では秋の平均気温は平年より2・6℃高く、やはり過去最も高かった。アパレル大手の会社は季節による販売スケジュールを「四季」から「五季」に転換、夏を「初夏・盛夏」(5〜7月)と「猛暑」(8〜9月)とし、5カ月間夏物を売ることにしたとのこと。世界中で異常気象により、極端な熱波で熱中症死亡、暑熱関連死などが発生。干ばつ、豪雨・洪水、海面上昇、海水温上昇、氷床崩壊などが加わり、生命・健康(感染リスク増)・生活への脅威、経済損失、生物多様性の消失が生じている。国連環境計画(UNEP)は各国が現在の温暖化対策のままでは世界の平均気温は今世紀末には、産業革命前から2・6〜3・1℃上昇するとの報告書を公表した。
さらに「パリ協定」の1・5℃目標達成には、35年度までに温室効果ガスを毎年7・5%ずつ減らさなければならないとし、猶予期間を「数年以内」と指摘している。
24年11月アゼルバイジャンで開かれたCOP29は、途上国支援の新たな資金目標として、先進国側が35年までに年3000億ドル(約45兆円)を出すことで合意した。脱化石燃料をめぐっては、一昨年のCOP28の成果(温室効果ガスを35年までに19年比で60%減、再エネ設備容量を3倍に増やす)の確認にとどまり、今回は同時期に、ペルーでAPECとブラジルでG20の会議が開かれ、日本や米国、中国など各国の首脳がそちらに出席、COP29への参加が少なかったこともあり、英国が35年までに温室効果ガスを81%削減するとした目標以外目立った前進はなかった。
気候変動対策の国際枠組み「パリ協定」では各国が今年2月までに、35年までの削減目標を提出しなければならない。したがって日本は「第7次エネルギー基本計画」を策定し、報告する予定になっている。24年12月の時点で、経済産業省がまとめる計画原案では、原発依存を「可能な限り低減」から「特定の電源や燃料源に過度な依存をしない」という趣旨の表現を盛り込む方向で、40年度の電源構成に占める割合を原発「2割」、再エネ「4〜5割」、火力発電「3〜4割」で調整を図っている。福島の教訓を忘れ、新規建設も含めた原発回帰を目指す。火力発電はG7で唯一石炭火力発電の撤退期限を表明しない国であり、温室効果ガスを35年までに13年比で60%削減(パリ協定では約66%が必要とされている)案を掲げ、環境NGOや市民団体などから温室効果ガス75%以上の削減を求められている。日本は世界第5位の排出国にかかわらず、低い目標で「ふりをして」(グリーンウオッシュ)、今回も世界の環境NGOが参加する「気候行動ネットワーク(CAN)」から、温暖化対策の足を引っ張る国として「化石賞」「特大化石大賞(日本など先進国24カ国・地域)」を受賞した。
気候危機は安全に暮らす権利が脅かされているとして人権問題として捉えられている。欧州人権裁判所は昨年4月、メンバーの平均年齢が73歳というスイスのシニア女性たちの市民団体の訴えを認め、スイス政府の地球温暖化防止策は人権侵害に当たると司法判断した。若者たちだけでなくシニアも頑張っている。私たちも気候危機に対して大きな声を上げる時が来ている。
(環境対策委員 山本 昭郎)