北陸新幹線の敦賀―新大阪間の延伸問題で、「小浜・京都ルート」について西脇隆俊京都府知事、松井孝治京都市長が与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの聴取(12月13日)に懸念を表明した。聴取は非公開で行われたが、報道によると松井市長は次の4点を指摘したという。
1点目は、地下水への影響。京都市内で初となる「大深度地下」でのトンネル建設となることから、京都の文化や市民の暮らしを支える地下水への影響を「科学的に検証しないといけない」こと。
2点目は、地元の財政負担。国土交通省は「小浜・京都ルート」の事業費が当初の2・1兆円から最大5・3兆円に膨らみ、工期は当初想定の15年から最長28年へ延びるとの試算を8月に示した。この事業費のうちJR西日本が支払う貸付料を除いた残りを国が3分の2、自治体が3分の1を支払う。財政状況の厳しい京都市には「負担は非常に重い」こと。
3点目は、建設残土の問題。国交省によると同ルートの8割がトンネルで、東京ドーム16杯分もの建設残土発生が見込まれる。京都府北中部の土壌は自然由来のヒ素濃度が高く、残土の30%が遮蔽シートで覆うことや中間処理が必要な「対策土」となるとみられている。この受入地確保が困難であるということ。
4点目は、交通渋滞。残土の運搬車両による京都市の慢性的な交通渋滞を招くことから、観光による渋滞に加えて「長期にわたる工事で相当な渋滞を及ぼす」ことが憂慮されること。
現行ルートは2016年に与党PTが決定したが、国交省試算で費用・工期の前提が大きく崩れたことで石川県を中心に「米原ルート」再考の声が高まっている。自民党京都府議団からもルート再考を国に求める府知事宛要望書が11月に出された。与党PTは、ルートはすでに決定しているとして、再検討を行おうとはせず結論を急いだが、現行ルートでの京都駅位置など詳細案の決定に至らず、25年度の着工は断念した。
西脇府知事と松井京都市長が示した論点は京都府民にとってはいずれも重要であり、京都仏教会が「千年の愚行」と再考を求めたように、地下水や環境面の懸念は深刻で取り返しのつかない問題となる。
残土の中に含まれている化学物質や有害物質は、燃料(ガソリンなど)、接着剤、ゴム、洗剤(界面活性剤など)、プラスチック、香料、殺虫剤、保存料、建材、消火剤、衣類など生活に使っている物質多数。自然由来重金属など含有土、土壌汚染対策法上の特定有害物質は、カドミウム、六価クロム、水銀、セレン、鉛、ヒ素、フッ素、ホウ素およびこれらの化合物。有名な化合物として有機水銀、ダイオキシン、PFAS、アスベストなどがある。
与党だけの閉じた議論ではなく、開かれた場で、延伸の必要性も含め抜本的な再考を強く求めたい。
(京都府保険医協会・環境対策委員会)
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