「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見」が示すもの地域医療構想・医師偏在是正・医療DXがもたらす影響は  PDF

2040年を新たな年限に
医療提供体制改革を推進
 団塊世代が75歳以上となり、社会保障費が嵩むと国が言い続けてきた「2025年問題」。その2025年が到来した。「地域における医療および介護の総合的な確保の促進に関する法律(2014年)」が想定した年限であり、現行の地域医療構想をはじめ、都道府県単位の「医療費適正化」政策の節目と言えよう。
 国はすでに「2040年」を新たな年限とする医療提供体制改革を構想し、準備を進めている。24年12月18日に厚生労働省の社会保障審議会医療部会が公表した「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見(案)」※(以下「総合改革意見」)は、現時点の国の構想を整理した文書である。「総合改革意見」はその内容に沿った医療法等改正を厚労省に求めており、今年の通常国会にも法案が提出される見込み。
「総合改革意見」の六つの柱
  新たな地域医療構想
 本文では新たな地域医療構想等に関する検討会が公表した「新たな地域医療構想に関するとりまとめ(2024年12月18日)」の通りとする旨のみを記述。「とりまとめ」は2025年に期限を迎える地域医療構想の達成を追求するとともに、2040年を年限とする「新たな地域医療構想」策定を都道府県に求める。地域医療構想を医療計画の上位概念に格上げし、病床のみならず外来・在宅医療も対象とする。入院医療では「病床機能報告」に加え新たに「医療機関機能」の報告を求めること等が記載される。
  医師偏在対策
 「総合改革意見」本文では と同様に「医師偏在対策に関するとりまとめ(2024年12月18日)」の通りとする旨のみを記述。「とりまとめ」は新たに「重点医師偏在対策支援区域(仮称)」を設定し、都道府県が「医師偏在是正プラン(仮称)」を策定することや「外来医師過剰区域」における新規開業のハードルの強化が盛り込まれる。医師偏在対策については12月25日、厚労省の医師偏在対策推進本部において「とりまとめ」の方向性を反映した「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」が策定されている。
  医療DXの推進
  必要な電子カルテ情報を医療機関・薬局等で共有する「電子カルテ情報共有サービス」を法律に位置付けて2025年度中に本格稼働、 マイナンバーカードを活用した医療費助成制度の効率化(公費負担医療・地方単独医療費助成のオンライン資格確認)、 医療等情報の二次利活用の推進、 以上の実施に向け、社会保障診療報酬支払基金を抜本改組し「審査支払機能を適切に維持する」一方、「医療DXに関するシステムの開発・運用主体の母体」とする。そのために法人の名称変更を検討、本来業務に「医療DX関連業務」を位置付け、新たな意思決定機関として「運営会議」(仮称)も設置する。
  美容医療の適切な実施
 「総合改革意見」本文では美容医療の適切な実施に関する検討会による「美容医療の適切な実施に関する報告書(2024年11月22日)」の通りとする旨のみを記述。「報告書」は「治療の幅が広がるとともに心理的ハードルも低くなり、広く国民の需要が高ま」る一方、「患者による相談件数や、身体に危害を受けた相談事例も増加している」と指摘。「美容医療に関する有害事象を防止し、質の高い医療の提供が行われるために必要な方策等」について記述。基本的には保健所等による指導・監視を実効的なものにする等、国による実態把握・関与を強化する方向を示す。
  オンライン診療
 これまでは「オンライン診療の適切な実施に関する指針(2018年3月)」等による法令の解釈運用によって実施されてきたが、医療法に規定を設けるべきとしている。
  その他
 認定医療法人制度を延長し、「持分なし医療法人への移行」をさらに促進すること、一般社団法人が開設する医療機関の非営利性の徹底を求めている。
現実の地域医療への影響は検証が必要
 以上のように「総合改革意見」はいわゆる「2025年問題」の年限に到達する中、さらなる近未来を見据えた国の問題意識と改革方向を示した。医療者そして患者・市民として、法整備が進むこれらの内容をどう受け止めるべきか。現実の地域医療へどのような影響があると予測すべきかの検討が急がれる。本紙では今号より4回連載(予定)で、示された六つの柱のうち「地域医療構想」「医師偏在対策」「医療DX」についての批判的分析を「政策解説」(4面)として試みる。ご注目いただきたい。

 ※ 第114回社会保障審議会医療部会 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_47469.html

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