レポート能登被災地の今2024.12.5-6  PDF

被害甚大でも病床再編計画進む 公立病院は被災者が地域に帰るために必要な存在

 1月1日に発生した能登半島地震の被災地の能登北部医療圏(輪島市・珠洲市・穴水町・能登町)に、12月5日から6日にかけて協会事務局が被災地の医療課題に関する調査活動に参加した。調査は公益財団法人日本医療総合研究所の「災害と地域医療の研究会」によるもので、横山壽一氏(佛教大学・金沢大学)、長友薫輝氏(佛教大学)、井口克郎氏(神戸大学)が参加した。

 能登北部圏域は半島最北端に位置し、甚大な被害を被った。輪島市では死亡者174人(うち災害関連死73人)、行方不明者2人、重軽傷者が516人。住家被害(棟)が全壊2301、半壊3926、一部破損4286である。珠洲市では死亡者146人(同49人)、重軽傷者が249人。全壊1748、半壊2082、一部破損1747である。穴水町では死亡者38人(同18人)、重軽傷者が258人。全壊388、半壊1294、一部破損1658である。能登町では死亡者46人(同44人)、重軽傷者が54人。全壊253、半壊971、一部破損4526※1である。
 調査は主に公立病院へのヒアリングと被災地状況を視察した。地域医療構想(25年度目標)によると、能登北部圏域の25年段階の必要病床数は計451床、機能別病床数でみると、高度急性期31、急性期158、回復期154、慢性期108とされる。これに対し、病床機能報告による22年の病床数は計591床、高度急性期0、急性期404、回復期103、慢性期84。地域医療構想の達成に向けて高度急性期をプラス31、急性期マイナス246、回復期マイナス51、慢性期プラス24への再編が求められる。しかし国の需給推計は震災前(13年度)のデータで、今回のような大規模震災にあたっては構想そのものが無効化すると考える方が自然である。それにもかかわらず国は震災後の7月5日時点で能登北部地域を「モデル推進区域」に指定。推進区域は「データの特性だけでは説明できない機能別病床数の必要量との差異が特に生じている」等を要件に、地域医療構想の目標病床数と実態に乖離があり、特に国の支援が必要と判断される地域※2である。公立病院はいまなお避難を余儀なくされている人たちが住み慣れた地域に帰るために必要な存在である。県は奥能登公立4病院機能強化検討会や地域医療構想調整会議を開催し、今後に向けた検討を進めている。一方で県知事は「奥能登2市2町の公立4病院の機能を統合し、能登空港隣接地に新たな病院を建設する計画」を示す。
 最近は被災地の状況がほとんど報道されなくなっている。道路の寸断はほぼ解消されていると見受けられたが、崩れた道路は残され、液状化の恐ろしさも見せつけてくる。沿岸部の津波被害、朝市が全焼した輪島市中心部の状況は震災発生時とほとんど変わっていないように見えた。ほとんどの家屋が被害を受け、集落全体が無人と化している地域もあった。
 財務省は「維持管理コストを念頭に置き、集約的なまちづくりを」などと提言し、不評を買った。しかしこれが「選択と集中」を重んじる国の本音だとすれば許されるものではない。能登に生きてきた人たちはこれからも能登で生き続ける権利がある。それこそが復旧の基本に据えられる必要がある。
 研究会は引き続き調査し、提言のとりまとめに向けて研究を進める。本紙でも引き続き報道したい。

 ※1 石川県ホームページ「令和6年能登半島地震による人的・建物被害の状況について」第177報、2024年12月10日14時00分現在
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_177_1210_1400.pdf
 ※2 京都府では丹後医療圏が指定されている。

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