主張 保険証の廃止がもたらす課題 何度も訴え地域医療支えたい  PDF

 2024年も終わりを迎えようとしているが、医療現場ではマイナ保険証をはじめとするデジタル化がもたらす課題が依然として大きな問題となっている。そのような中、10月26日、「ほんとに大丈夫?マイナ保険証―なくしたらあかんやろ健康保険証」と題する市民フォーラムを京都府歯科保険医協会と京都弁護士会共催のもと、京都弁護士会館で開催した。この3者で企画するイベントは今回が初めてである。弁護士会はそれほど保険証廃止を由々しき問題と認識している。
 フォーラムでは講師の荻原博子氏がジャーナリストの立場からマイナ保険証の不備を浮き彫りにした。すなわちマイナ保険証を読み取れないなどの不具合のために医療機関はかえって事務作業が増えた、あるいは煩雑な手続きのため自治体、保険者、患者皆困っているなどである。荻原氏の指摘は多くの市民が抱えている不安や不満を代弁するものであった。
 京都弁護士会からはマイナ保険証が引き起こす三つの問題点が提起された。一つは自己情報コントロール権への制限。他人に知られたくない情報、例えば不妊治療や精神疾患などの個人情報が外部に漏洩する可能性である。二つ目は、情報弱者が生じる不平等。これは法の下の平等に反する可能性がある。三つ目は、任意取得の原則に反すること。すなわちマイナンバーカードは本人の申請により交付するものとされているが、その原則が脅かされるというのである。
 これらの問題点は保険医協会が何度も繰り返し訴えてきた。京都弁護士会は法的な観点から我々と同様の懸念を表明した。
 10月に2024年ノーベル平和賞は日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)に決定した。これは地道な草の根活動が評価されてのことである。規模も内容も異なるが、保険医協会も長年地道に草の根的に地域医療を支えるため活動してきた。今回の受賞はそのような保険医協会の在り方に勇気を与えてくれるものでもある。

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