輪行:サイクリングA公共交通機関を使ってサイクリングを始める所まで自転車を持って移動する事(広辞苑第七版)
輪行散歩と季節
私は今も、月に2回程のペースで輪行散歩に出かけています。日本は美しい。春は花、夏はホトトギス、秋は月。冬は(雪は自転車に禁物ですが)冷しい。
暑い真夏日にも、青い空や茂った山に惹かれてサイクリングに出かけていました。
スケッチは、その頃のサイクリングで出会ったサーファーたちです。潮風があります。
輪行散歩は一年中楽しめると自慢してきました。しかし、最近は違います。呑気なことを言っている場合ではなくなりました。夏は危険な季節になっています。
熱中症の体験を述べます。数年前の7月末、カンカン照りの昼下がりに淀川沿いをサイクリングしていました。途中から風に涼しさがなくなりました。長く走ったのでいささか疲れ、石清水の茶店に寄りかき氷を食べたのですが、座っていた床几が着衣の汗で黒く濡れてしまい、気まずかったのを覚えています。再び走行を続け、住宅街に入ろうと高い堤防を越えた時でした。急に名状し難い症状に包まれました。めまいのような不吉な無力感。
「ついに来たか」
訳分からずにそう思いました。しかし脳や心臓とどうも違う。そして視野の周りが暗い。目を閉じた時の暗さでなく闇に包まれるよう。臨終の方が発する「クライ」とはこの暗さかという思いがよぎったものです。幸いにも自宅が近かったし、これぞ熱中症に違いないと必死に帰宅しました。
こんな時に限って鍵のかかっている玄関を開け、這う這うの体で冷水シャワーに飛び込み、無茶苦茶に浴びました。ひと心地つき、どうやら助かったようだと畳に横たわっていました。やがて何も知らぬ家人が帰宅して来たようで、嘆く声が奥に聞こえてきました。
「道に自転車が放ったらかし。風呂のシャワーも出っぱなし」
そうか、頭も少しやられていたのか。
スケッチは生駒郡平群町朝護孫寺です。サイクリングの時は魔物がすぐ横にいるようです。
題の絵・挿絵も筆者
静岡県浜名郡の大海原と砂浜
危い!信貴山の木彫が警告