輪行: サイクリング 公共交通機関を使ってサイクリングを始める所まで自転車を持って移動する事(広辞苑第七版)
輪行散歩とバス、船
各地に向かう高速バスを利用して輪行散歩ができると良いのですが、バスは無理と思っておく方が良さそうです。バス会社に問い合わせても色良い返事はありませんでした。鉄道のように必ず乗れてこそ安心してサイクリングができるのです。日暮れのバスにオイテケボリを食らった日には、遠い地で路頭に迷ってしまいます。
私は、一度だけ路線バスに乗せてもらったことがあります。若狭を巡って小浜駅に到着した夕刻のことです。駅前広場に近江今津行(近道コース)のJRバスがエンジン音を響かせて発車待ちをしていました。運転台の窓下へ行き
「自転車袋を持っていますが、乗せてくれませんか」
しかし、小窓を開けた運転手は首を横に振りました。ヤッパリ敦賀回りの電車か、と駅舎の隅で自転車を畳んでいると、先ほどの運転手がバスを降りて歩いて来て
「他の客の邪魔にならぬようにすれば、乗車していいよ」
うれしく袋詰め自転車を持ち込むと、なるほどバスの中は狭い。次第に乗客が増えてきて、気まずい思いもしましたが、何と1時間後には琵琶湖岸。もう京都はすぐそこ。
一方、輪行散歩に船はうれしい。まるで自転車の預り所に入れるように乗船できます。渡し船では地元の人に倣ってハンドルを握ったままで良いし、大きなフェリーでは船員がサッと自転車を側壁に結え着けてくれます。
普段の船旅はまだるっこしいものですが、自転車を連れて乗る船の中は一息つけて別世界。潮の匂いさえ格別です。
そうそう、江田島を輪行した時、フェリーの客室テレビが速報を伝えました。
「帝王切開で逮捕されていた産婦人科医師に無罪判決」
輪行の別世界気分に浸っていた産婦人科医の私は、自分に言われた気がして思わずココハ何処ダと客席を見渡しました。窓の外で広島湾が明るく輝いていました。
題の絵・挿絵も筆者
バスの中は狭い
早瀬の瀬戸。渡し船より描く