協会は産婦人科診療内容向上会を8月3日に京都府医師会館で開催した。京都産婦人科医会との共催で参加者は30人。京都産婦人科医会理事で支払基金京都支部審査委員の井上卓也氏が「保険請求の留意事項と最近の審査事情」を解説。きじまこころクリニック院長の織田裕行氏が「性別不合 ジェンダー医療の理解と協働 」について講演した。
レポート
井田 憲蔵(山科)
京都産婦人科医会の柏木智博会長と保険医協会の福山正紀副理事長よりあいさつがあった。柏木会長からは京都府の少子化について懸念が示された。井上理事より、産婦人科診療に関する2024年度診療報酬改定の注意点とレセプト作成における留意事項について話があった。
特別講演として、きじまこころクリニック院長の織田裕行氏より、「性別不合 ジェンダー医療の理解と協働 」の演題で、ジェンダー医療に関わる基礎的な用語の説明から、ガイドラインや法律に関する説明、過去の判例、実際の医療について、非常に多岐にわたって実際の医療の現実について分かりやすく講演いただいた。
診断名
もともとGID(gender identity disorder)という言葉が「性同一性障害」と訳され使用されていたが、GD(gender dysphoria, 性別違和)を経て、GI(gender incongruence)と変遷し、この言葉は「性別不合」と訳される予定である。日常で使用する言葉で「LGBT(Lesbian Gay Bisexual Transgender)」に関してはLGBとTを並べることの問題などからTGD(Transgender and Gender-Diverse)が用いられつつある。
性別不合に関する診断と治療のガイドライン
診断と精神科領域の治療が行われる。診断には1)ジェンダーアイデンティティの判定、2)身体的性別の判定、3)除外診断がある。その結果、身体的治療(薬物療法、外科的治療)が必要と判断された患者には、 適応判定会議(各科医師と心理関係の専門家、ソーシャルワーカーなど)により身体的治療の要否が判定される。身体的治療が必要とされる患者には ホルモン療法や乳房切除術、性別適合手術などが行われ、戸籍の性別変更を申請する場合には 「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」による診断書が必要となる。
ジェンダー医療の問題
ジェンダー医療に関わる医療施設は都市部に集中し、多科・多職種・多施設での医療の協働が必要でありながら、都市部以外では治療が難しい現実がある。性同一性障害の治療は上記のガイドラインに沿った医療を行うため、認定施設に紹介する際は患者にガイドラインを一読することを勧め、診断や治療までに時間がかかったり、未成年の場合は身体治療への移行が困難な場合もあることをあらかじめ説明するのが望ましいとのことである。
今回の特別講演は普段情報の得られないGIDに対する治療に関する知見を得られる貴重な機会であった。今後の診療にぜひ生かしていきたい。
講師の織田氏