米原ルートに変えたほうがいい
北陸新幹線の敦賀―大阪間のルートをめぐって議論の迷走が続いている。
1973年、全国新幹線整備計画に書かれたのは、小浜、亀岡を経由して大阪に直結するルートだった。主要交通軸から外れた地域の開発と、原発立地に対する見返りの意識があったのだろう。
しかし、京都を通らないのはさすがに便利が悪い。
その後、米原ルート、湖西ルート、小浜・京都ルートを中心に誘致運動と比較論争が展開された。自治体は府県域にこだわり、一時は小浜―舞鶴―京都という案まで出た。
2016年12月に与党プロジェクトチームが小浜・京都ルートを採用。17年3月には、京都から京田辺市(松井山手付近)を経て新大阪につなぐ南回り案を追加した。
今年8月には、事業主体となる鉄道建設・運輸施設整備支援機構と国交省が、京都市内のルートと駅の位置について、東西案、南北案、桂川駅案の3案を公表した。
小浜から南は、ほとんどがトンネル。京都市街地も北西の鳴滝か御室あたりからシールド工法でトンネルを掘る。京都の駅の位置がどの案でも敦賀以南の工期は25年以上。事業費は物価上昇を見込むと5兆円前後かかるという。
旧美山町、旧京北町の山間部は国定公園。駅もできないのに土砂の掘削・運搬で迷惑を受ける。京都市街地は地下水の枯渇や地盤沈下が懸念されており、平安京などの遺構も壊されるかもしれない。
さっさと米原ルートに変更したほうがいい。
いちばんの理由は需要。人が行き来するのは北陸と京阪神方面だけではなく、北陸と東海方面も多いからだ(この論点を語る人は少ない)。
小浜―京都に南回りを加えたら約140キロ。米原ルートなら50キロで、工期は短く、事業費も少なくて済む。
東海道新幹線のダイヤが過密で乗り入れ困難と言われるが、大阪―敦賀間の特急サンダーバードは1時間に2本。新大阪―名古屋間の新幹線は1時間に最大12 13本。東京―新横浜間は1時間に最大15 16本、走っている。
直通時は乗務員が交代すればよい。北陸新幹線は長野駅でJR東日本、JR西日本の乗務員が交代している。
どうしても無理なら米原乗り換えでもよい。リニア新幹線が大阪まで延伸されたら、東海道新幹線のダイヤに余裕が生まれるので、その時点で北陸へ直通運転すればよい。
残念に思うのは滋賀県の新幹線新駅。06年の知事選で約240億円の地元負担を「もったいない」と訴えた嘉田由紀子氏が当選し、中止された。草津周辺は日本有数の人口急増地域で企業や大学の立地も多く、新幹線の追い抜き用待避線もつくれたのに。
実は、小浜・京都ルートが採用された最も大きな要因はJR西日本の意向である。新大阪まで自社路線一本にしたい、JR東海の新幹線に接続して収入を持っていかれるのはいやだ……。国鉄分割民営化の悪影響が出ている。
北陸新幹線のルートは年内に決めるという。つまり、まだ確定はしていない。一握りの政治家や営利企業の思惑で決めてよいことではない。
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