水越医院は祇園祭の船鉾町にある。この町内に住む人たちにとって、7月の祇園祭の手伝いは欠かせない1年の大仕事だ。例年6月中旬から準備が始まり、7月の祭行事、7月下旬の後仕舞いまでの多くが力仕事の連続である。
7月3日吉符入。吉符入とは祭の神事始めで、開始宣言である。この日に「神面改め」の儀式を行う。船鉾には御神体“神功皇后”がお付けになる面が二つある。本面は室町時代の作、写し面は江戸時代の作で船鉾では最も重要なものである。通常は貸金庫に納められており、この日、間違いなく引き継いでいることを確認する。
7月17日山鉾巡行。町内の役員総勢20数人がお供として四条、河原町、御池、新町を5時間程かけて巡行する。「祇園祭の間は自分たちの役割で精一杯で、他の山鉾を見る時間はまったくありません」と文和医師は笑う。
左の写真:神面改めの様子。写し面を掲げる文和医師(右)〈出所:2012年7月3日京都新聞〉、右の写真:巡行の前に=2024年7月17日撮影