MRI検査時に化粧によって熱傷
(50歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
患者は脳梗塞の疑い、末梢神経炎の疑い、内頚動脈狭窄症の疑いのため、本件医療機関でMRI検査を受けた。その際、患者は日焼け止めと化粧をしたままであった。その日の夜間、化粧水を塗る時に顔に痛み、赤みを認めたと患者から本件医療機関に電話連絡があったため、皮膚科受診を勧めた。患者が他医療機関を受診した結果、顔面の熱傷との診断だった。
患者は化粧を落とさずにMRI撮影を実施したことで顔に熱傷を負ったとして、損害賠償請求してきた。化粧を落とさずにMRI検査をすれば熱傷してもおかしくないと他医療機関で言われたとのこと。
医療機関側としては、MRI検査に際し、金属を含むものがあれば熱傷の可能性がある旨の説明は行っていたが、化粧品に限っての説明はしていなかった。患者の使用していた化粧品の成分に金属(酸化鉄・酸化チタン等)が含有されていることが判明したが、化粧品と熱傷の因果関係や予見可能性の有無、説明義務等については不明とした。今後は再発防止として、MRI検査時には化粧品が熱傷の原因になることを含めた注意書をMRI検査対象の患者に必ず渡すとのことだった。
紛争発生から解決まで約1年10カ月間要した。
〈問題点〉
患者が事故当日の夜に顔面の異常を訴えていることと、検査時に使用していた化粧品の成分から、MRI検査と熱傷の因果関係はあると考える。また、患者に対して化粧を落とすこと、あるいは化粧が原因で熱傷が生じる可能性があることを検査の前に言わなかったことは過失があったと考える。
〈結果〉
医療機関側が過誤を認めて、賠償金を支払い示談した。