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少子高齢化と社会保障システムの見直しの必要性
植田 良樹(伏見)

 日本の社会保障費が大変なことになっている。社会保障関係の給付は130兆円程度、ほとんどが年金・医療・介護である。国家予算の歳出約113兆円のうち38兆円がそこに回される。今後も増えると見通される。生活保障が足りないと行政に注文をつけても、財源まで考えなければ実現の説得力に欠ける。
 国債を増やせばいいと言う人はいる。国債はすでにたくさん出ており、利上げできない状態で円がどんどん安くなっている。日銀は国債買い入れ減額を発表した。あてにはできない。
 法人税を上げろと言う人もいる。日本の法人税は世界標準ではすでに高い。法人の稼ぎ頭は国際展開している企業群で、高額法人税回避で海外移転されたなら、むしろ税収も下がり就業者も減って年金保険料も減り、購買力も下がって消費税収入も減る。
 消費税はどうか。生活に直結するものは簡単に上げるわけにいかない。景気のために下げろという論者も多い。歳入上もかなりの額であり、所得税減税などを行う今の財政状況でこちらを下げられるわけもない。むしろ免税業者も軽減税率もなくして完全一律にした方がインボイスもいらなくなり手間つまり経費が減るので、税収のみならず全体の生産性も上がるだろう。価格転嫁できないシステムや商習慣、その結果廃業していく現象は異様で、そちらをもっと問題にするべきである。保険医療でも加算や管理料の増加は喜ばしいことではない。書類作成や届け出や入力の手間は経費である。
 社会保障費高騰のおおもとは高齢化で、多数の高齢者の社会保障に減少の一途をたどる少数のより若い年齢からの年金保険料が回されている。社会保障の充実という名目で、現状の制度では若い世代が締め上げられる。給与の多くを占める事実上立派な税金と言える年金保険料を払うのは、年金を将来もらう権利を得るという意味でしかなく、どうせ大してもらえないのにという怨嗟が若い世代から聞こえてくる。
 年金保険料は雇用主が半分出すことになっていて、この半分は給与扱いされていない。ちゃんと給与に算入して、年金保険料負担の大きさを認識するべきである。近く年金保険料には少子化対策費も押し込まれることになったが、子作りを語る状況ではすでになく将来はさらに暗い。ならば移民をと言うが、「日本人はXenophobia」とバイデン大統領に言われるように、外国人との付き合いが不慣れだ。不法入国者の犯罪を看過するかと思えば、正当な来日労働者を搾取する。そもそも言語隔壁が高い上に国力の落ちた異様に行政手続きの多いままの日本に、生産性の高い外国人人材が財政を再建できるレベルで来るだろうか。
 ところで、日本の金融資産は高齢者に偏る。働かないので収入がなく住民税も非課税。今の若年層が将来得られそうもない年金を受給し、資産額が消費税に大きく反映されない高齢者は一定数いるはずで、老老介護の延長ではないが、富裕高齢者の金融資産の一部にでも課税し、高齢者の社会保障に充てる方策を考える必要がある。企業の内部留保よりよほど実体があるだろう。若年者への資産移転も今以上に後押ししなければ、相続税になる頃には手遅れではないか。
 使い方も考える時である。例えば、高額医療制度、生活保護制度があるのに、高齢者の自己負担減額を維持するのは論理的におかしいのではないか。保持資産の多い高齢者への年金自体も考える余地はある。非課税世帯という理由だけで保持資産に関わりなく特別給付金をばらまくのはどうなのか。
 持続可能な公的保険制度の堅持のためには、人口の増える時代に作られたシステム全体の見直しから提案することが、今後必要になってくるだろう。そのような役割を私は保険医団体である保険医協会に果たしてほしいと思っている。

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