主張 不安高まるサイバー攻撃に 対策講じ日頃から備えを  PDF

 2023年度(23年6月 24年5月)も会員からさまざまな医療事故に関する報告・相談が寄せられた。
 23年度の主な特徴として、 医療事故報告件数は36件あり、コロナ禍前の水準まで戻った 事故報告数の病診比率は、若干であるが病院が診療所を上回った 紛争原因別では「管理」に関するものが最多 解決率は全事故報告の内98・1%が解決に至っており、依然として高水準を保っている―などが挙げられる。
 23年度も会員医療機関に日常診療における「安心」と「安全」をより一層高めていただけるようさまざまな医療安全に関する取り組みを行った。
 その一環として、医療安全講習会を3回開催した。徳島県のつるぎ町立半田病院をはじめ医療機関がサイバー攻撃により甚大な被害を被っている状況や医療法施行規則の一部を改正する省令により2023年4月1日から医療機関の管理者はサイバーセキュリティの確保について必要な措置を講じるとされたことなどを受け、小規模医療機関を対象とした情報セキュリティ対策に関する講演会を開催した。京都協会会員のみならず、全国の多くの保険医協会・医会会員に参加いただき、この問題への全国的な関心の高さがうかがえた。
 同時期に行った代議員アンケートでは、サイバー攻撃に対して「不安を強く感じる」あるいは「感じる」との回答が約8割に至った。しかし一方で、厚労省が示した「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」や「医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト」を確認していないという回答も約7割あり、サイバー攻撃に不安を感じてはいるものの、具体的な対策を講じられていない状況が浮き彫りとなった。サイバー攻撃を完全に防ぐことは難しいかもしれないが、リスクを少しでも低減するために、先述したガイドラインやチェックリストを参考に対策を講じていただきたい。さらに、万が一に備え、協会でも取り扱っているサイバー保険への加入もぜひ検討いただきたい。
 6月には、厚労省より新たに「サイバー攻撃を想定した事業継続計画(BCP)策定の確認表」が発出されており、必ず確認し策定に取りかかっていただきたい。
 医療機関の管理者がセキュリティ対策を講じることは医療法で定められた義務であり、また医療安全においても欠かすことのできない対策の一つである。適切な対応ができるかどうかは日々の備えが重要であると言っても過言でない。「いざ」という時に備えていただきたい。

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