昨今のDXは医療機関経営、とりわけ税務への影響が大きい。特に23年10月から始まったインボイス制度、24年1月1日改定の電子帳簿保存法などはDX化に向けた大きな起爆剤と言える。そこで、主に電子帳簿保存法の問題とその対応法、そこから見える医療分野での税務のDX化の影響について岡田俊明税理士に解説いただく(全6回)。
やさしい電子帳簿保存法対応入門 1
何でもDXの時代
デジタル化の波が社会に襲いかかってきています。最近は何でもDX(デジタル・トランスフォーメーション)の大流行です。
医師・歯科医師の世界もご多分に漏れず、デジタル化が進みつつあります。かつてはレセコン、そして電子カルテ。例えば、電子カルテの普及率は一般病院、一般診療所で5割を超えたあたりでしょうか。現在話題のマイナ保険証対応でも、導入費用がかなり必要と聞いています。身辺には、「これを機に」と廃業を考えるクリニックがあります。こうしたことは私ども税理士にとっても同じで、業務処理はコンピュータ抜きではありえない状況にあり、頭の痛い問題です。会計帳簿を手書きで作成している税理士は、ほぼいないでしょう。
帳簿・書類の電子保存?
電子帳簿保存法(電帳法)という法律が全文改正されたのは、2021年度税制改正の際です。この法律はたった8条しかない小さな法律。その小さな法律が大きな仕事をしようとしているから大変です。
この電帳法、実は三つの大仕事を予定しています。全ての事業者(企業)に対して、@電子的に作成した帳簿・書類はデータのまま保存A紙で受領・作成した書類をスキャナ保存B電子的に授受した取引情報はデータで保存―することを求めています。
@Aは任意です。つまり、事業者の選択になります。選択する場合も、届出や承認を必要としません。ところが、問題はBについては義務化され、強制になったことです。いつからか。今年の1月からです。そう、もう始まっています。それも、本当は22年1月から即実施のところ、あまりに性急すぎるとして、2年間延長されていました。
この義務化は、個人・法人、青色・白色申告の別、企業の規模にも関係なく、全ての事業者に強制する仕組みです。
会員の皆さん、実施できていますか?
おかだ・としあき
青山学院大学大学院法学研究科博士後期課程修了
元青山学院大学招聘教授・同大学大学院非常勤講師
元特別国税調査官
日本租税理論学会理事
東京税理士会指定講師
東京税財政研究センター理事長
税理士(税理士法人白井税務会計事務所代表)